エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「ご当主様より、こちらを」

差し出されたのは、白い封筒だった。
封蝋には、見たことのない紋章が押されている。

鳳城くんはそれを受け取ると、眉をひそめた。

「何これ」

「今週末の晩餐会へのご招待状です」

「断る」

即答だった。

男性は表情を変えない。

「結城様もご一緒に、とのことです」

空気が凍った。

「……は?」

鳳城くんの声が、低く落ちる。

私は思わず自分を指さした。

「わ、私も?」

「はい。ご当主様が、ぜひ一度お会いしたいと」

教室中がざわめき始める。

「結城さんが鳳城家の晩餐会に?」
「どういうこと?」
「まさか、本当に特別な関係なの?」

顔が熱くなる。
でも、それ以上に怖かった。

鳳城くんのお父さんが、私に会いたい。
それはきっと、歓迎したいからではない。

鳳城くんも同じことを考えたのか、封筒を握る手に力が入った。

「ほのかは行かない」

「ですが、ご当主様は――」

「俺がそう言ってる」

「カイルくん」

思わず声をかけると、鳳城くんがこちらを見る。

「行く」

「ほのか」

「大丈夫。ちゃんと自分の目で見てみたい」

本当は怖い。
でも、鳳城くんの家のことで、いつまでも何も知らないままではいたくなかった。

鳳城くんはしばらく黙っていた。
やがて、諦めたように息をつく。

「……俺から離れるなよ」

「うん」

「何を言われても、ひとりで受け止めようとするな」

「うん」

「返事だけは素直だな」

「だって、鳳城くんが心配してくれてるから」

そう言うと、鳳城くんは一瞬だけ黙りこんだ。
それから、私の額を指先で軽くつつく。

「心配させるな」
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