目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
フォーレ、レクイエム、歴史的文脈ーー。

​「あ……申し訳ございません。私は、そこまでの教養は……」

​「あら、ごめんなさい。問い詰めるつもりはなかったの」

香奈江は可憐にクスリと笑うと、真由の肩に優しく手を添えた。

​「素晴らしい実務能力をお持ちなのは存じておりますわ。けれど、蓮がこれから渡り合っていく世界は、契約書と数字だけでは動かないの。……お疲れでしょうから、あちらのソファで休んでいらっしゃったら?」

​悪意を見せず、完璧なマナーで真由を「外側」へと追いやる鮮やかな手際。

真由の胸に、冷たい無力感が広がっていく。

​だが次の瞬間、鷹司が静かに真由の肩を抱き寄せ、香奈江の手を自然な動作で制した。

​「――そこまでにしてもらおうか、東堂」

​鷹司の声は静かだったが、その瞳には氷のように透き通った冷気が宿っていた。

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