目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
宗一郎が張り巡らせた金融包囲網は着実に狭まりつつあったが、鷹司の瞳には一切の怯みもなかった。

​「真由、来たか」

​短く視線を交わしただけで、2人の間に言葉以上の意思疎通が成立する。

真由は自分のデスクに付き、すぐさま端末を起動した。宗一郎が仕掛けた「明日の役員会」というタイムリミットまで、残された時間はあとわずか。

​画面上で明滅するチャットツールに、シンガポール現地スタッフからの緊迫した更新通知が躍った。

真由はキーボードに指を走らせ、迷いのない打鍵音とともに指示を打ち込む。

​『修正スキームのドラフトを今から暗号化ラインで送信します。北欧ファンドへの提示条件、1点も妥協しないでください』

​交渉を続ける蓮の横顔から、数時間前までの焦燥は完全に消え去っていた。

真由が憧れ、そして惹かれた完璧で不敵な「三ツ橋商事の副社長」としての光が完全に立ち戻っている。

​
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