目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
「副社長、ロンドン行き過よりも国内を優先してください」

​書類を整理していた蓮が、手をとめて真由を鋭く見つめた。

​「……何?」

​「今、ロンドンに飛んでも、相手は『審査中』という壁を崩しません。宗一郎様の手が回っている以上、ロンドンでの直接交渉も足止めに利用されるだけです」

​真由はデスクの上に、自作の資金フロー図と国際法務の対比表を広げた。

連日の徹夜で目の下にはうっすらと隈が浮かんでいたが、その背筋は驚くほどまっすぐに伸びている。

​「宗一郎様の狙いは、我が社を欧州協調融資(シンジケートローン)のフレームワーク内でじわじわと干殺しにすることです。ならば……最初からその盤面(ゲーム)で戦わなければいい」

​蓮の眉がわずかに跳ねた。真由の手元にある資料へ、ゆっくりと視線を落とす。

​「どういうことだ」

​
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