『サレ妻の日常謎解き録 〜浮気夫の嘘、すべて解明いたしました〜』
 翔太が探していたものは、すぐに分かった。

 私の実印。

 そして、結婚前に私が自分の力で築いた資産――旧姓の「久宝杏奈」名義で契約している個人投資信託の証書が入ったファイルだ。

「……なるほど。そういうこと」

 以前から、翔太には不自然な出費が増えていた。

 身の丈に合わないブランド品。営業先との接待だと言い張る高額な飲食代。そして、莉子とのデートに使ったらしい郊外のホテルやレストランの利用履歴。

 給与だけで賄える額ではない。
 消費者金融か、カードローンか。

 いずれにせよ、翔太は膨らんだ借金の穴埋めに、私の個人資産を使おうとしている可能性が高かった。

 私に無断で実印と証書を持ち出し、名義を偽って解約しようとしていたのだとすれば、不倫だけでは済まされない。

 防犯カメラの映像を複製し、スマートロックの履歴と併せて保存する。

 その日の昼休み、私は以前から相談先として調べていた弁護士事務所へ連絡を入れた。

 不倫相手のSNS投稿。
 カフェのレシート。
 翔太の残業申告と矛盾する位置情報。
 スマートロックの解錠履歴。
 そして、書斎の引き出しを荒らす防犯カメラの映像。

 私は集めた資料を時系列に並べ、推測と確認済みの事実を明確に分けて提出した。

 弁護士の助言を受け、実印と証書はその日のうちに貸金庫へ移し、金融機関にも事情を伝えて必要な手続きを取った。

 離婚届。
 翔太に対する慰謝料請求の準備書面。
 不倫相手である莉子への慰謝料請求書。
 さらに、会社のコンプライアンス窓口へ提出するための資料。

 必要な準備は、すべて整った。

 あとは、最高に盛り上がるパーティーの開宴を待つだけだ。
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