『サレ妻の日常謎解き録 〜浮気夫の嘘、すべて解明いたしました〜』
第二の謎:夫の服に残るバニラの香りと、書斎の防犯カメラ
翔太が能天気に昇進祝いのパーティー準備を進める裏で、私は着々とゴミの分類作業を推し進めていた。
証拠集めにおいて重要なのは、感情に任せず、論理的な裏付けを積み重ねることだ。
得意のエクセルでマクロを組み、日付、時刻、位置情報、出勤記録を自動で照合できる一覧表を作成する。
まず着手したのは、不倫相手の特定だった。
「郊外のカフェ・ド・ルポ」のレシート。
「高級輸入バター」と「焼き菓子の香り」。
私は翔太の会社の公式SNSや、彼がフォローしている後輩たちの公開アカウントをひとつずつ確認した。
探し始めてから、さほど時間はかからなかった。
営業部の後輩、姫川莉子。二十五歳。
彼女のインスタグラムには、見覚えのあるカフェのテーブルで撮影された写真や、手作りのガトーショコラが堂々と投稿されていた。
『先輩が「家で使わないから」って高級発酵バター差し入れてくれたから、お礼にガトーショコラ焼いた♡ 焼き立てを車の中でふたりでパクり。甘い香りに包まれて幸せ〜』
ハッシュタグには「#尊敬する先輩」「#秘密のドライブ」「#スイーツ男子」。
「……本当に、おめでたい頭をしているわね」
私はその画面を冷静にスクリーンショットへ収め、日時とURLが分かる状態でクラウドへ保存した。
念のため投稿全体をPDF化し、外部ストレージにも複製しておく。
妻が自分のために買った千五百円のバターを、「家で使わないから」と偽って女へ渡し、その見返りに作らせたガトーショコラを、二人きりの車内で食べていたわけだ。
呆れを通り越して、哀れみすらこみ上げてくる。
だが、私の観察眼が捉えた違和感は、これだけでは終わらなかった。
ある朝、出勤前にスマート家電のログを確認していたときのことだ。
火曜日の午前十時。
外回りに出たはずの翔太が、一時帰宅している記録を見つけた。
玄関のスマートロックには、翔太の暗証番号を使って解錠された履歴が残っている。
私はすぐに、書斎へ設置してある防犯カメラのデータを確認した。
仕事上の資料や重要書類を保管しているため、万が一に備えて設置していたものだ。
録画履歴を開いた瞬間、私は小さく息を吐いた。
そこには焦った様子で書斎へ入り、デスクの引き出しを乱暴に開けて、中身をひっくり返す翔太の姿が鮮明に残されていた。
証拠集めにおいて重要なのは、感情に任せず、論理的な裏付けを積み重ねることだ。
得意のエクセルでマクロを組み、日付、時刻、位置情報、出勤記録を自動で照合できる一覧表を作成する。
まず着手したのは、不倫相手の特定だった。
「郊外のカフェ・ド・ルポ」のレシート。
「高級輸入バター」と「焼き菓子の香り」。
私は翔太の会社の公式SNSや、彼がフォローしている後輩たちの公開アカウントをひとつずつ確認した。
探し始めてから、さほど時間はかからなかった。
営業部の後輩、姫川莉子。二十五歳。
彼女のインスタグラムには、見覚えのあるカフェのテーブルで撮影された写真や、手作りのガトーショコラが堂々と投稿されていた。
『先輩が「家で使わないから」って高級発酵バター差し入れてくれたから、お礼にガトーショコラ焼いた♡ 焼き立てを車の中でふたりでパクり。甘い香りに包まれて幸せ〜』
ハッシュタグには「#尊敬する先輩」「#秘密のドライブ」「#スイーツ男子」。
「……本当に、おめでたい頭をしているわね」
私はその画面を冷静にスクリーンショットへ収め、日時とURLが分かる状態でクラウドへ保存した。
念のため投稿全体をPDF化し、外部ストレージにも複製しておく。
妻が自分のために買った千五百円のバターを、「家で使わないから」と偽って女へ渡し、その見返りに作らせたガトーショコラを、二人きりの車内で食べていたわけだ。
呆れを通り越して、哀れみすらこみ上げてくる。
だが、私の観察眼が捉えた違和感は、これだけでは終わらなかった。
ある朝、出勤前にスマート家電のログを確認していたときのことだ。
火曜日の午前十時。
外回りに出たはずの翔太が、一時帰宅している記録を見つけた。
玄関のスマートロックには、翔太の暗証番号を使って解錠された履歴が残っている。
私はすぐに、書斎へ設置してある防犯カメラのデータを確認した。
仕事上の資料や重要書類を保管しているため、万が一に備えて設置していたものだ。
録画履歴を開いた瞬間、私は小さく息を吐いた。
そこには焦った様子で書斎へ入り、デスクの引き出しを乱暴に開けて、中身をひっくり返す翔太の姿が鮮明に残されていた。