『サレ妻の日常謎解き録 〜浮気夫の嘘、すべて解明いたしました〜』
「郊外のカフェのレシート、翔太さんの残業報告、そしてスマートロックの通過ログ。三つのタイムスタンプが見事に一致していますわ。……あの日、我が家の冷蔵庫から消えた1,500円の発酵バターは、姫川さんのガトーショコラに化けていたというわけね」
投稿画面の横に、カフェのレシートと翔太の行動記録を並べて表示する。
翔太が残業していたはずの時間。
二人が郊外のカフェにいた時間。
そして、莉子が「秘密のドライブ」と称して写真を投稿した時刻。
すべてが、一本の線でつながっていた。
「あ、杏奈! お前何言ってるんだ! これはただの冗談で――」
慌てて立ち上がる翔太を片手で制し、私はリモコンのボタンを一度、トントンと叩いた。
画面が切り替わる。
次に映し出されたのは、書斎の防犯カメラが捉えた高画質の映像だった。
翔太が私のデスクの引き出しを開け、中身を次々と取り出していく。
早送りを止めると、実印を保管していたケースと投資信託のファイルへ手を伸ばす姿が、スクリーンいっぱいに映し出された。
「さらに翔太さんは、姫川さんとの遊び金を捻出するため、結婚前からの私個人――『久宝杏奈』名義の資産と実印を盗み出そうと自宅に侵入されていました。窃盗未遂の動かぬ証拠です」
「な……っ!?」
課長をはじめとする同僚たちの視線が、一瞬で蔑みと軽蔑に変わった。
「深山……お前、会社のお金や後輩に手を出すどころか、奥さんの個人の財産まで……!」
「ち、違います課長! これは誤解で――!」
「誤解ではありませんわ」
私はクリアファイルから書類一式を取り出し、角を揃えてテーブルへ置いた。
トントン、と乾いた音が響く。
「離婚届、私と姫川さん双方への慰謝料請求書、そして社内のコンプライアンス窓口への通報書類です。これより、すべての嘘を清算させていただきます」
翔太の唇が、金魚のように開閉する。
莉子は青ざめた顔で俯き、震える指を膝の上で握り締めていた。
私は二人の前へ、それぞれの書類を滑らせる。
完璧に整えられたテーブルの上で、二つの粗大ゴミだけが、ひどく場違いに浮いて見えた。
投稿画面の横に、カフェのレシートと翔太の行動記録を並べて表示する。
翔太が残業していたはずの時間。
二人が郊外のカフェにいた時間。
そして、莉子が「秘密のドライブ」と称して写真を投稿した時刻。
すべてが、一本の線でつながっていた。
「あ、杏奈! お前何言ってるんだ! これはただの冗談で――」
慌てて立ち上がる翔太を片手で制し、私はリモコンのボタンを一度、トントンと叩いた。
画面が切り替わる。
次に映し出されたのは、書斎の防犯カメラが捉えた高画質の映像だった。
翔太が私のデスクの引き出しを開け、中身を次々と取り出していく。
早送りを止めると、実印を保管していたケースと投資信託のファイルへ手を伸ばす姿が、スクリーンいっぱいに映し出された。
「さらに翔太さんは、姫川さんとの遊び金を捻出するため、結婚前からの私個人――『久宝杏奈』名義の資産と実印を盗み出そうと自宅に侵入されていました。窃盗未遂の動かぬ証拠です」
「な……っ!?」
課長をはじめとする同僚たちの視線が、一瞬で蔑みと軽蔑に変わった。
「深山……お前、会社のお金や後輩に手を出すどころか、奥さんの個人の財産まで……!」
「ち、違います課長! これは誤解で――!」
「誤解ではありませんわ」
私はクリアファイルから書類一式を取り出し、角を揃えてテーブルへ置いた。
トントン、と乾いた音が響く。
「離婚届、私と姫川さん双方への慰謝料請求書、そして社内のコンプライアンス窓口への通報書類です。これより、すべての嘘を清算させていただきます」
翔太の唇が、金魚のように開閉する。
莉子は青ざめた顔で俯き、震える指を膝の上で握り締めていた。
私は二人の前へ、それぞれの書類を滑らせる。
完璧に整えられたテーブルの上で、二つの粗大ゴミだけが、ひどく場違いに浮いて見えた。