『サレ妻の日常謎解き録 〜浮気夫の嘘、すべて解明いたしました〜』
数か月後。
離婚に関する手続きがすべて終わり、私は役所へ離婚届を提出した。
不要になった「深山」の姓を捨て、本来の「久宝杏奈」へと戻る。
会社の社員証と名刺を新調し、銀行口座や各種契約の名義を変更する。最後に、マンションの表札を付け替えた。
これで、すべての不快なゴミは片づいた。
日曜日の午後。
一人暮らしに戻った静かなリビングで、私は丁寧に手挽きした深煎りのブラックコーヒーを淹れていた。
すっきりと幾何学的に整理整頓された部屋。
不快な男の匂いも、呆れるほど浅はかな言い訳も、もうどこにも存在しない。
冷蔵庫を開ける。
一番上の棚には味噌と納豆。二段目には常備菜のタッパーが、ミリ単位で美しく並んでいる。
そして、その隣には新しく買ったフランス製の高級発酵バターが、誰にも触れられることなく収まっていた。
私は満足して扉を閉め、淹れたてのコーヒーを手に窓辺へ向かう。
「やっぱり、部屋も人生も……不要なゴミは早めに断捨離するに限るわね」
窓から差し込む柔らかな日差しを浴びながら、私はブラックコーヒーをひと口飲んだ。
苦みの奥に、わずかな甘みが広がっていく。
完璧に整った我が家で、私はようやく、自分だけの新しい人生へ一歩を踏み出した。
(完)
離婚に関する手続きがすべて終わり、私は役所へ離婚届を提出した。
不要になった「深山」の姓を捨て、本来の「久宝杏奈」へと戻る。
会社の社員証と名刺を新調し、銀行口座や各種契約の名義を変更する。最後に、マンションの表札を付け替えた。
これで、すべての不快なゴミは片づいた。
日曜日の午後。
一人暮らしに戻った静かなリビングで、私は丁寧に手挽きした深煎りのブラックコーヒーを淹れていた。
すっきりと幾何学的に整理整頓された部屋。
不快な男の匂いも、呆れるほど浅はかな言い訳も、もうどこにも存在しない。
冷蔵庫を開ける。
一番上の棚には味噌と納豆。二段目には常備菜のタッパーが、ミリ単位で美しく並んでいる。
そして、その隣には新しく買ったフランス製の高級発酵バターが、誰にも触れられることなく収まっていた。
私は満足して扉を閉め、淹れたてのコーヒーを手に窓辺へ向かう。
「やっぱり、部屋も人生も……不要なゴミは早めに断捨離するに限るわね」
窓から差し込む柔らかな日差しを浴びながら、私はブラックコーヒーをひと口飲んだ。
苦みの奥に、わずかな甘みが広がっていく。
完璧に整った我が家で、私はようやく、自分だけの新しい人生へ一歩を踏み出した。
(完)


