豪華客船デッドタイム
FRAME 00 瞬間
——俺の名前は浦田 幸人(29)。長野県松本市生まれのフリーカメラマンだ。俺は写真というものをこよなく愛している。何で写真を愛しているかって?答えは簡単……俺にしか撮れない『美しさ』があるからだ。——
2028年10月3日、13時頃。大阪府大阪市のモデル事務所『ルミナ大阪』では——
「スゥ……ム……」
ピピピ……カシャ……ピピピ……カシャ……
「最高!これは間違いなく最高級の1ページになるぞ!」
この日はグラビアモデルの撮影を行っていた。純白のビキニと少しだけ焼けた肌。
「チェックしてみるか?」
「はい」
直立、座り、寝そべりなど、あらゆる角度から撮影した写真。
「すごい……!足の裏からくびれラインとか……!めっちゃピンポイントで撮れてますね!?」
「俺に撮れない瞬間はない……」
持っているカメラが高性能な理由はあるが、浦田幸人が撮影する写真はどれもドンピシャなタイミングで撮られている。脚を上げる角度や笑顔の瞬間、むしろ撮れない方が難しい。
「全部選びたいです!」
「全部?それだと写真集の範囲をオーバーするんじゃないのか?」
「まあ全部は無理ね……でもこの写真私にくれませんか?」
「お安い御用だ……」
最高の瞬間を撮れて、人から褒められて感謝される。カメラマンは彼にとって天職だった。
「ありがとうございました!本当に良い写真をありがとうございます!」
「時間があれば何でも撮ってやるさ。もちろん、ヌードもな……」
「ヌードは……撮ることないと思います……」
これで今回のグラビア撮影は終了。ルミナ大阪を出てスマホに管理されている撮影スケジュールの確認をする。
「この後道頓堀で広告撮影、明日は神戸に移動ね……」
長野県松本市に自宅を持っているが、常にスケジュールがぎっちり詰まっていて家に帰ることが少ない。ホテルで宿泊することもあれば、公園で寝泊まりすることもしばしば。
「ゴクゴク……」
彼は缶コーヒーを飲み干すとタクシーを拾う。
「道頓堀……まあ適当なとこ止めてくれ。安全運転で頼む」
「わかりました」
ブーン……
安全運転を頼むのにもきちんと理由がある。車の窓から見える景色も1枚の写真になる。
ピピピ……カシャ……
カメラマン人生は今年で9年目。仕事は好きだが、忙しくて恋人を作っている暇はない。むしろ全国を飛び回る生活に合わせてくれないだろう。
ブーン……
「ここでいいですか?」
「問題ない」
「では、1,560円です」
「これで」
「440円のお返しです。ありがとうございました」
バンッ……
「さてと……広告撮影だから色々撮っちゃうか……!」
14時頃の道頓堀。大阪の名物は色々とあるが、その中でお好み焼き、たこ焼き、串カツを思い浮かべる人は多いだろう。広告の撮影となれば撮影対象は無限大!幸人は軽くステップを踏みながら『瞬間』となるものを探し歩く。
ジュー……
そんな彼が目をつけたのは屋台のお好み焼き屋。お客であるお婆ちゃんが店員の方をじっと見ている。
「ではいきまっせ……!」
ビュン……クルクル……ビャー……
「よっと!へいお待ち!」
「いつ見てもすごいわぁ〜ありがとう!」
ほう……どうやらこのお好み焼き屋『回転や』は注文が入ると、必ずお好み焼きの投げ技を披露し、素早くソースとマヨネーズを空中でかけるようだ。これは興味深い。
コツ……コツ……
「俺にもお好み焼き1枚くれるか?ついでに、写真撮っていいか?ちょうど今広告の撮影をやっててね」
「撮影!?でも僕なんかいいんですか?僕の技ごっつ早いですよ!」
「ご心配なく……」
「ならいくでぇ……」
ジュー……ビュン……クルクル……
「スゥ……」
ビャー……
「ム……」
ピピピ……カシャ……
「フゥ……」
ヒュゥン……
「よっと!へいお待ち!」
「おお……!あっつ……生地がモチモチで美味いぞ……」
「そういえば写真は撮ったんですか?カメラ向けた様子とか見えんかったけど……」
「ああ……最高の1枚が撮れたよ……これ」
「すげぇ……!?いつの間に……」
カメラに写し出されていたのは、空中のお好み焼きにソースとマヨネーズを華麗にかける店員の姿。これは何度も角度を調整しなければ撮影できない領域。
「これ道頓堀の飲食店紹介記事に掲載していいか?」
「是非使ってくだせぇ!」
面白い技を披露するだけでなく、生地まで美味しいお好み焼きなら、この先繁盛すること間違いないだろう。だがそれにしても、カメラを向けた様子がなかったというならいつ撮ったのだろうか?一つわかるのは、撮影する前に必ず深呼吸をしていることだけ。
「早速良いのが撮れちまったな……さて次はどうしようかな?」
まさかこんなに早くに最高の1枚が撮れるとは……やはり望みさえすれば運は俺に味方してくれる。だが同時に——
バーン……!
「キャー……!?」
「何だ何だ?」
たまたま近くの銀行から銃声が鳴り響く。銀行強盗か?警報は鳴らされていないようだが、鳴らされる前に金を奪ってずらかろうって肚だろう。彼の足は無意識に銀行へ踏み入れる。
ウィーン……
「来ちゃダメです……!」
「おい!両手を頭に置いて跪け……早くしろ……!」
「おいテメェ!早くしねぇと本当に撃つぞ?撃たれてぇのかゴラァ!?」
銀行強盗の犯人は3人か……
「大丈夫だ。君たちは引き金も引けない……」
「何……!?」
「スゥ……ム……」
シィィン……
彼は深呼吸の後に息を止めた。そして息を吐いた瞬間——
「うぅ……」
何と銀行強盗をしていた3人組は倒れて気を失っていた!それは幸人が息を止めて吐くまでの一瞬の出来事だった。
「さあ通報するなら今の内だぜ?」
「は……はい!」
何が起きたのか理解できない銀行員は彼に言われるがまま警察に通報。すぐに警察が来るだろう。
「さてと……まあ今日は良いの撮れたし、道頓堀観光も悪くないな!」
先ほどの銀行強盗犯だが、銃を向ける瞬間もきちんと撮っている。今まさに撃たれる!と思わせる瞬間、緊迫感はマックスだ。常人ならパニックになるはずなのに、なぜ彼はあんなに冷静でいられるのだろうか?それに天才的な撮影法とは?まだ明かすことはできないが、それは彼が持つ『秘密の能力』にある。
ピコン……
スマホの通知は何かのネットニュース。そこに書かれていたのは『世界最大規模の豪華客船、アルディオン・レガリアが10月5日に出航決定を発表』。
「豪華客船……面白いネタがありそうだ」
2028年10月3日、13時頃。大阪府大阪市のモデル事務所『ルミナ大阪』では——
「スゥ……ム……」
ピピピ……カシャ……ピピピ……カシャ……
「最高!これは間違いなく最高級の1ページになるぞ!」
この日はグラビアモデルの撮影を行っていた。純白のビキニと少しだけ焼けた肌。
「チェックしてみるか?」
「はい」
直立、座り、寝そべりなど、あらゆる角度から撮影した写真。
「すごい……!足の裏からくびれラインとか……!めっちゃピンポイントで撮れてますね!?」
「俺に撮れない瞬間はない……」
持っているカメラが高性能な理由はあるが、浦田幸人が撮影する写真はどれもドンピシャなタイミングで撮られている。脚を上げる角度や笑顔の瞬間、むしろ撮れない方が難しい。
「全部選びたいです!」
「全部?それだと写真集の範囲をオーバーするんじゃないのか?」
「まあ全部は無理ね……でもこの写真私にくれませんか?」
「お安い御用だ……」
最高の瞬間を撮れて、人から褒められて感謝される。カメラマンは彼にとって天職だった。
「ありがとうございました!本当に良い写真をありがとうございます!」
「時間があれば何でも撮ってやるさ。もちろん、ヌードもな……」
「ヌードは……撮ることないと思います……」
これで今回のグラビア撮影は終了。ルミナ大阪を出てスマホに管理されている撮影スケジュールの確認をする。
「この後道頓堀で広告撮影、明日は神戸に移動ね……」
長野県松本市に自宅を持っているが、常にスケジュールがぎっちり詰まっていて家に帰ることが少ない。ホテルで宿泊することもあれば、公園で寝泊まりすることもしばしば。
「ゴクゴク……」
彼は缶コーヒーを飲み干すとタクシーを拾う。
「道頓堀……まあ適当なとこ止めてくれ。安全運転で頼む」
「わかりました」
ブーン……
安全運転を頼むのにもきちんと理由がある。車の窓から見える景色も1枚の写真になる。
ピピピ……カシャ……
カメラマン人生は今年で9年目。仕事は好きだが、忙しくて恋人を作っている暇はない。むしろ全国を飛び回る生活に合わせてくれないだろう。
ブーン……
「ここでいいですか?」
「問題ない」
「では、1,560円です」
「これで」
「440円のお返しです。ありがとうございました」
バンッ……
「さてと……広告撮影だから色々撮っちゃうか……!」
14時頃の道頓堀。大阪の名物は色々とあるが、その中でお好み焼き、たこ焼き、串カツを思い浮かべる人は多いだろう。広告の撮影となれば撮影対象は無限大!幸人は軽くステップを踏みながら『瞬間』となるものを探し歩く。
ジュー……
そんな彼が目をつけたのは屋台のお好み焼き屋。お客であるお婆ちゃんが店員の方をじっと見ている。
「ではいきまっせ……!」
ビュン……クルクル……ビャー……
「よっと!へいお待ち!」
「いつ見てもすごいわぁ〜ありがとう!」
ほう……どうやらこのお好み焼き屋『回転や』は注文が入ると、必ずお好み焼きの投げ技を披露し、素早くソースとマヨネーズを空中でかけるようだ。これは興味深い。
コツ……コツ……
「俺にもお好み焼き1枚くれるか?ついでに、写真撮っていいか?ちょうど今広告の撮影をやっててね」
「撮影!?でも僕なんかいいんですか?僕の技ごっつ早いですよ!」
「ご心配なく……」
「ならいくでぇ……」
ジュー……ビュン……クルクル……
「スゥ……」
ビャー……
「ム……」
ピピピ……カシャ……
「フゥ……」
ヒュゥン……
「よっと!へいお待ち!」
「おお……!あっつ……生地がモチモチで美味いぞ……」
「そういえば写真は撮ったんですか?カメラ向けた様子とか見えんかったけど……」
「ああ……最高の1枚が撮れたよ……これ」
「すげぇ……!?いつの間に……」
カメラに写し出されていたのは、空中のお好み焼きにソースとマヨネーズを華麗にかける店員の姿。これは何度も角度を調整しなければ撮影できない領域。
「これ道頓堀の飲食店紹介記事に掲載していいか?」
「是非使ってくだせぇ!」
面白い技を披露するだけでなく、生地まで美味しいお好み焼きなら、この先繁盛すること間違いないだろう。だがそれにしても、カメラを向けた様子がなかったというならいつ撮ったのだろうか?一つわかるのは、撮影する前に必ず深呼吸をしていることだけ。
「早速良いのが撮れちまったな……さて次はどうしようかな?」
まさかこんなに早くに最高の1枚が撮れるとは……やはり望みさえすれば運は俺に味方してくれる。だが同時に——
バーン……!
「キャー……!?」
「何だ何だ?」
たまたま近くの銀行から銃声が鳴り響く。銀行強盗か?警報は鳴らされていないようだが、鳴らされる前に金を奪ってずらかろうって肚だろう。彼の足は無意識に銀行へ踏み入れる。
ウィーン……
「来ちゃダメです……!」
「おい!両手を頭に置いて跪け……早くしろ……!」
「おいテメェ!早くしねぇと本当に撃つぞ?撃たれてぇのかゴラァ!?」
銀行強盗の犯人は3人か……
「大丈夫だ。君たちは引き金も引けない……」
「何……!?」
「スゥ……ム……」
シィィン……
彼は深呼吸の後に息を止めた。そして息を吐いた瞬間——
「うぅ……」
何と銀行強盗をしていた3人組は倒れて気を失っていた!それは幸人が息を止めて吐くまでの一瞬の出来事だった。
「さあ通報するなら今の内だぜ?」
「は……はい!」
何が起きたのか理解できない銀行員は彼に言われるがまま警察に通報。すぐに警察が来るだろう。
「さてと……まあ今日は良いの撮れたし、道頓堀観光も悪くないな!」
先ほどの銀行強盗犯だが、銃を向ける瞬間もきちんと撮っている。今まさに撃たれる!と思わせる瞬間、緊迫感はマックスだ。常人ならパニックになるはずなのに、なぜ彼はあんなに冷静でいられるのだろうか?それに天才的な撮影法とは?まだ明かすことはできないが、それは彼が持つ『秘密の能力』にある。
ピコン……
スマホの通知は何かのネットニュース。そこに書かれていたのは『世界最大規模の豪華客船、アルディオン・レガリアが10月5日に出航決定を発表』。
「豪華客船……面白いネタがありそうだ」


