さくらの恋は、まだ終わらない。

一番星のとなりで、見つけた答え


季節は巡り、木々の緑が濃くなる初夏。
学校の帰り道、私と湊はいつものように並んで歩いていた。相変わらず少し歩幅の早い湊に、私は小走りでついていく。

「おい、遅いぞさくら。置いていくからな」
「ちょっと待ってよ、湊の足が長すぎるんだもん!」

言い合いながらも、自然と笑みがこぼれる。
少し前まで、恋くんの背中ばかりを追いかけて泣いていた私が、今こうして隣を歩く湊の顔を見て笑っている。

数日前、私は恋くんにちゃんと向き合い、心の整理をつけた。
恋くんは驚いた顔をしたけれど、最後には優しく「ありがとう、さくらちゃん。俺、りりかを大切にするよ」と笑ってくれた。
不思議と、胸の痛みはなかった。そこにあったのは、長い旅の終わりにたどり着いたような、晴れやかな解放感だけだった。

「……で、どうなんだよ?」
不意に、湊が足を止めて私を振り返った。
夕日に照らされた湊の横顔が、いつになく真剣で、どこか緊張しているように見える。

「なにが?」
「とぼけんな。……俺の返事だよ。もう、十分考えただろ」

からかうような、でも怯えているような、そんな絶妙な表情をする湊が愛おしくて、私は思わずフッと笑った。

「そういえば、まだ湊にちゃんと言ってなかったね」
「……っ」

湊がゴクリと喉を鳴らしたのが分かった。
私は大きく息を吸い込むと、真っ直ぐに湊の目を捉えた。ずっと、私のために泣いて、怒って、笑ってくれた、一番大切な幼馴染の目。

「私ね、もう過去の恋にしがみつくのはやめる。……だから、これからは湊の隣にいてもいい?」

言葉が出た瞬間、夕闇の空に、ぽつりと一番星が瞬いた。

湊は目を見開いたあと、信じられないものを見るような顔をして、そして——今まで見たこともないほど、嬉しそうに、とびきりの笑顔を浮かべた。

「……当たり前だろ!」

湊は私の手を強く、壊れそうなほど優しく包み込んだ。
大きな手のひらから伝わる熱が、私の心をいっぱいに満たしていく。

「もう二度と、他のやつのところになんて行かせねぇからな」
「うん。……よろしくね、湊」

一番星が優しく見守る夜空の下、私たちは手を繋いで、新しい未来への一歩を踏み出した。
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