さくらの恋は、まだ終わらない。
選ばないといけない未来、選べない私
「……え?」
息が止まりそうだった。
湊のその言葉は、いつかの冗談でも、勢いでもなく、本気中の本気だった。
「俺はずっと、お前が好きだ。昔も、今も、あいつと付き合う前からずっと、お前だけを見てる。……なのに、お前はいつまで過去の幻影を追いかけてんだよ」
湊の声音には、怒りよりも深い切なさが滲んでいた。
「忘れられない人」と「ずっと愛してくれる人」。
頭の中で、恋くんの優しい笑顔と、私のために本気で怒ってくれる湊の姿が交錯する。
「私……分からないよ、湊……」
ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
恋くんへの想いは、私の青春そのものだった。簡単に切り捨てられるほど薄いものじゃない。
だけど、湊が私のために流してくれた涙の重みも、ずっとそばで支えてくれた温もりも、もう私の心に深く根を張っていた。
「……答えなんて、今すぐ出さなくていいよ」
私の泣き顔を見て、湊はふっと力が抜けたように苦笑いした。そして、乱暴だけど優しく、私の頭を引き寄せて、自分の肩に預けた。
「でも、これ以上俺以外の男を見て泣くのは禁止だ。……俺が、許さねぇから」
その胸の鼓動は、驚くほど速くて、大きかった。
恋くんを想うときのような苦しい切なさとは違う、じんわりと体温が満たされていくような安心感が、私の心を包み込んでいく。
放課後の夕暮れが、世界を茜色に染めていく。
私はまだ、完全に恋くんを忘れられたわけじゃない。けれど、私の隣にいるこの温もりを手放したくないと、初めて強く思っていた。