どうして、あの子ばかり目で追ってしまうのだろう?

第3章:一番大きな声で


次の大きな大会が目前に迫った放課後。
それぞれの学校で汗を流す部員たちの中に、ひときわ強い決意を秘めた二人がいた。

「声出していこう!」

桜はベンチの端から、誰よりも大きく、力強い声を響かせる。その声が体育館の空気を震わせた瞬間、コートの真ん中にいた佐保ブルッと肩を揺らし、ハッと顔を上げた。

――あの子の声だ。

反射的に視線を向けた先で、桜の瞳と佐保の視線が、まっすぐに、鮮やかにぶつかり合った。
ただの「憧れ」でも「推し活」でもない。名前のつかなかった熱い想いが、お互いの胸の中で確かな形に変わっていく。

目を逸らさない桜と、驚いたようにわずかに目を見開いたのち、ふっと柔らかく微笑み返す佐保。

「――どうして、あの子ばかり目で追ってしまうのだろう?」

その答えを、もう二人は知っている。
心の中でそっと名前をつけたその恋は、コートの端から一番大きな声に乗せて、きらめく秋の空へとまっすぐ届いていくのだった。
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