嘘つきな3人
午前中は、請求書と入金データの照合に追われた。月末が近いせいか、机の上には処理を待つ書類がいつもより多い。
一枚ずつ確認して数字を合わせ、合わなければどこでずれたのかを探す。原因が見つかって、ぴたりと数字が合う瞬間が好きだった。
「美作さん、これもお願いします」
直人くんが、申し訳なさそうに領収書の束を差し出してくる。
「……昨日、今日中に出してくださいって言いましたよね」
「言われました!」
「じゃあ、なんで今なんですか」
「忘れてました!」
悪びれずに言われて、思わずため息が出た。
「次から遅れたら、自分で入力してくださいね」
「それだけは勘弁してください……」
向かいの席から巴さんが笑う。
「直人くん、美作ちゃん怒らせると怖いわよ」
「怒ってません」
「その顔で?」
納得がいかなくて眉を寄せると、また笑われた。
こういうやりとりは、嫌いじゃない。直人くんが呆れられて、巴さんが笑って、所長が聞こえているのに何も言わない。気づけば私も、その中にいる。
昔は、誰かの会話の輪に入るだけで身構えていた。でもここでは、頑張って馴染もうとしなくても、いつの間にか一緒に笑っている。