嘘つきな3人

「朝起きて紅の顔見たら、俺、事務所行きたくなくなるかもしれない」

「なにそれ。伊久間(いくま)くん変なの」

口にしてから、間違えたことに気づいた。
今は、伊久間くんじゃない。

奏斗くんがわざと傷ついたような顔をする。

「やり直し」

「え?」

「ちゃんと、呼んで」

「……奏斗くん」

こんなことで嬉しそうにする理由が、私には分からない。それでも求められるまま、名前を呼ぶ。
すると今度は満足したように目を細めて、私の額に軽く唇を寄せた。

恋人でもない。好きだと言ったことも、言われたこともない。
それでも、ときどき夜だけ、私たちは誰より近くなる。

そのことを不思議だと思わなくなったのが、いつだったのか。
もう、思い出せなかった。
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