嘘つきな3人
第1章 ◇ 夜だけの名前 ◇
「……奏斗くん」
「なに、紅」
掠れた甘い声が返ってくる。
奏斗くんに抱き寄せられ、身体は隙間なく重なっている。少し動かれるだけで、触れ合った肌が擦れて、息が乱れた。
「……なんでもない」
「呼んだくせに?」
頬にかかった髪を指先でよけられる。そのまま耳の後ろをゆっくりなぞられて、思わず肩をすくめた。
奏斗くんが、すぐ近くで小さく笑う。
「ここ、弱いよね」
「……知ってるなら、触らないで」
「知ってるから触ってんの」
意地悪だと思うのに、嫌だとは思わない。
奏斗くんは、私が触れられたくないところも、触れてほしいところも知っている。どんなふうに抱きしめれば安心するのかも、どのくらい触れれば私の呼吸が変わるのかも。
言葉にしなくても、全部。
長い時間をかけて覚えられてしまった私のことを、今さら隠せる気もしなかった。