家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
1 うぇあ・いず・まい・きゃりーばっぐ?
00 今日もいい日になりますように!
 ぴー、ぴー、ぴー……

「はいはいっ、今行きますよー」

 平和を告げる電子音。
 レースカーテン越しに射し込む爽やかな日差し。
 パカッ、と開けた蓋の下から、白い湯気がふわりと広がってくる。
 炊けたご飯特有のあまーい香り。
 ふんふんと鼻唄を歌いながら混ぜ混ぜした後、蓋を閉める。
 隣のコンロには、味噌汁用の小鍋に火がかかっている。くつくつ言い始めたので火を消して、一呼吸。
 これで、あとは味噌を投入すればよし。

 ちらりと時計を見ると、そろそろ8時。
 もう、起きてくるかしら……

 目をやった先の部屋には、この家の主が眠っている、はず。

 今日の朝食はご飯に味噌汁、浅漬け。
 最後に焼き魚を用意するつもりなのだけど、早めに焼いては固くて美味しくなくなるから、家主の起床待ちだ。
 共同生活を始めた頃は、朝は食べない主義だと言っていたけど、1ヶ月が経つ今やときどきこうして和食をリクエストしてくれるまでになった。

 ちなみに、今朝が和食の理由は、「昨日米を食べてないから」。
 なかなかシンプルかつ合理的で、納得できる理由ではないか。
 ……私が単純なだけなのかもしれないけど。

 はぁあ。それにしても、早く起きて来ないかなぁ。
 空いたお腹をさすりながら、冷蔵庫から味噌を出す。猫舌らしい家主は、あっつあつの味噌汁は苦手なのだ。
 味噌を溶きながらいい匂いを鼻腔いっっぱいに吸い込み、ふはぁー、と吐き出したとき。
 ぐきゅるるるぅ、とお腹が盛大に鳴ると同時に、ガチャ、とドアが開いた。

「……」
「……」

 しばし、間。

「……おはよう」
「おはよー、ございます……」

 もともと表情筋が心配なほど表情に乏しい家主さんは、じっと見つめても感情がよくわからない。
 銀縁眼鏡越しの涼やかな目はいつも通り挨拶をくれた。

 けど、絶対、なんか、さっきの間……は。
 もしかして……さっきの腹の虫、聞かれてた?
 うわー、はずかしっ。

「お、お膳準備しちゃいますねっ。あと魚焼くだけですから!」
「ああ」

 端的に答えて、そのまま洗面所へ向かう、その横顔を覗き見る。
 私よりも頭ひとつ高い背。すらりとした長身に乗った顔は、インドア派らしい白い肌をしている。
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