家ナシ女子は能面社長に拾われる~今日もいい日になりますように!~
 黒々とした艶やかな髪はあんまり寝癖がつかないたちらしい。
 イケメン社長ーー
 なんて世間に呼ばれているその顔は、確かに整っていて、見るたびに納得してしまう。

 彼の横顔が、ふと、こちらを向く。
 あわっ。視線を察知されたかな?
 私はピシッと背を伸ばした。

「……腹減ったなら、先つまんでてもいいんだぞ」

 やっぱり聞こえてたーーー!!

 私が真っ赤になって硬直しているうちに、家主ーー吉浦さんは洗面所に消えていた。

 ***

「いただきます」
「はい、召し上がれ」

 食卓につくや、キチン、と手を合わせた吉浦さんは、落ち着いた挙動で朝食を摂り始めた。
 私は腹の虫の声を聞かれたのが恥ずかしいやらなんやらで、なんとなく目線を合わせるのが気まずい。
 目の前で黙々とご飯を食べる吉浦さんを、ちらりちらりと見やる。

 うつむきがちな目を縁取るまつげは、頬の高い位置に陰を作っている。
 男の人にこういうのもなんだけど、見れば見るほど美人さんだ。

 吉浦さんは食事中にあれこれ話す人じゃない。だから、私も黙って食べるようにしている。
 ほんとはもう少し、会話できるといいなぁ、なんて思うけど、それはちょっと贅沢ってもんだろう。
 彼と一緒に住みはじめて、1ヶ月。
 最初はあれこれ戸惑ったけど、今の私にとっては、ここが一番安心できる場所だ。

「今日は遅くなるから夕飯は要らない。たぶん11時を過ぎる。先に寝ていて構わない」

 不意に降ってきた言葉にはっと顔を上げる。

「はい、了解いたしました!」

 笑顔で大きく頷いた。
 私からは何も言ってないのだけど、吉浦さんは最近こうして予定を教えてくれる。
 たぶん、待っている私を気遣ってくれているのだと思う。
 一見、考えていることが分かりにくいし、取っつきにくい人。
 ……だけど、決して冷たい人ではないのだ。
 そういう、分かりにくい優しさを感じるとき、なんだかほっこりして嬉しくなる。

 吉浦さんは一瞬目を泳がせて、手元の皿を示した。

「……ちょうどいい塩気の鮭だな」
「あっ、吉浦さんのはちょっといいの買いました! お口に合ってよかったです!!」

 私の言葉に、吉浦さんの眉が寄った。

「俺の#は__・__#? ……お前のはどうなんだ」

 あっ。しまった。つい、口を滑らせた。
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