パイロットパパは、三つ子とママを諦めない
焦りを滲ませた声に思わず顔を上げると、スーツ姿の男性が階段を駆け下りてくるところだった。額にはうっすらと汗が浮かび、ネクタイは少し歪んで、肩で息をしている。その姿は、一見すると大事な会議に遅れそうな会社員にも見えたが、私の目を引いたのは、右手にしっかり握りしめられた頑丈そうな四角い黒の革鞄だった。
――フライトバッグ?
通訳という仕事柄、空港を利用する機会の多い私には見慣れた、パイロットが持ち歩く鞄だ。
男性は切羽詰まった表情でスマホの画面と、はるか先まで続くタクシーの列を何度も見比べると、小さくため息を漏らした。
「あと四十分でオペレーションセンターに入らなきゃならないのに、これじゃ間に合わない……。他をあたるにも……」
その小さな呟きが、ざわつく駅前の喧騒の中でも、不思議なくらいはっきりと私の耳へ届く。
――フライトバッグ?
通訳という仕事柄、空港を利用する機会の多い私には見慣れた、パイロットが持ち歩く鞄だ。
男性は切羽詰まった表情でスマホの画面と、はるか先まで続くタクシーの列を何度も見比べると、小さくため息を漏らした。
「あと四十分でオペレーションセンターに入らなきゃならないのに、これじゃ間に合わない……。他をあたるにも……」
その小さな呟きが、ざわつく駅前の喧騒の中でも、不思議なくらいはっきりと私の耳へ届く。