後ろの魔王様
目尻をこれでもかと下げた、その人物。

私にはまったく、心当たりがなかった。


「北小でさァ、二年のとき隣のクラスだったじゃん!」

「確かに私、北小出身だけど……」

「そんでェ、絆創膏オレにくれたじゃん!」


肩に引っ掛けた鞄からフリーザーバックを取り出したと思ったら、私の机にそれを優しく置く。

そこには、花柄の黄色い絆創膏が入っていた。


「可愛い絆創膏は持ってた気もするけど……」

「オレ、ずっと覚えてたよ。ここちゃんのこと」

「え、えーっと……」

「ここちゃんに会いたくて転校してきたんだから」


クラスのお調子者、中村くんが「ピュゥ!」と口笛を吹く。それに触発されたクラスメイト数人が囃し立て始めた。


「覚えてないのかよ、小鳥遊」

「スゲー再会だぜ?」


そう言われても、覚えていないものは覚えていない。

可愛い絆創膏は持ってたような気もするけれど、何せ小学生の頃のことだ。

睨みつけるように絆創膏を見つめても、私の頭の中のアルバムは一切反応してくれない。


「えっと、ごめん……覚えてなくて」

「そっかァ……」

「絆創膏は確かに持ち歩いてはいるんだけど」


おばあちゃんから言われて、小学生の頃から絆創膏や裁縫セットは持ち歩くようにしている。

だから、友達に絆創膏を渡したりするのはわりと日常の一コマだった。


そのうちの一人だった、のかもしれない。
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