後ろの魔王様
悲しそうな表情で絆創膏の入ったフリーザーバックを鞄に仕舞った転校生は、パッと満面の笑みを浮かべた。


「ま、これからはここちゃんと一緒にいれるしィ」

「へっ?」

「クラスメイトとしてよろしくねェ!」


下がりきった目尻の奥の瞳は、とても甘い。

こんなに好意を向けられたことは一度もなくて、私はずり下がった眼鏡を直すことも忘れて「あはは……」と乾いた笑みを返すことしか出来なかった……。



それからは、英くんの独壇場。

背も高くて金髪。転校してきたばかりなのに、英くんはあっという間に学校で目立つ存在になった。

そのせいか、ちょっと怖いグループの人たちに目をつけられることも増えて。

それなのに、英くんの興味はなぜか私……。

しつけられたワンコみたく私にくっ付いて歩くものだから「女の尻を追っかけているヘタレな男」なんて言われて、喧嘩を吹っ掛けられることも多くなった。

けれど、英くん。
実は喧嘩大好きな暴れん坊で……。

喜んで喧嘩を買い、そして自らも売り……。

拳と長い脚を振り回して、相手を黙らせてしまうのだった……。


そんなこんなで誕生してしまった『魔王』の呼び名。

そりゃあ、あれだけ喧嘩して、しかも笑いながら次々と相手を沈めていったらそう呼ばれるよね……。


それでも英くんが一番気にしているのは私なのだから、どうなっているのやら……。
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