僕に好かれて困った君、愛でたい!
『ナオちゃーん♡』

「!!」

耳元から飛び込んできた声に、ナオは反射的にスマホを離した。

心臓がドクンと大きく跳ねる。

あー、推し。この声は本物だ。
いや、昨日会ったから本物なのは知ってるけど!

普段イヤホン越しに聴いている声が、今は自分の名前を呼ぶためだけに耳元から聞こえてくる。

なんだこれ、待って待って。
これは非常に心臓に悪い。

『ナオちゃん?』

「あ、はい!います!」

慌ててスマホを耳に戻すと、電話の向こうからリキのクスクス笑う声が聞こえた。

『よかったぁ~!全然出ないから寝てるのかと思った』

「起きてたよ!」

『じゃあ何してたのー?』

「えっ」

推しからの電話にビビってました、とは言えない。

ナオは意味もなく髪を触りながら、部屋の中を2歩3歩とうろついた。

「べ、別に何もしてないよ。それより、な、何ですか?」

できるだけ普通に。
昨日知り合った、3歳年下の男の子と話すように。

そう自分に言い聞かせても、相手はあのkickthroughのリキなのだから無理がある。

しかも電話は顔が見えない分、余計に敬語を意識してしまうよ。

何か喋らなきゃ。
でも何を?

昨日のお礼?
ネイルの話?
いや、そもそも電話をかけてきたのはリキなんだから、わたしが話題を探す必要ないよね?

そんなことを1人で考えていると、

『ねぇ、ナオちゃん』

「な、なに?」

『まず敬語禁止』

「は、……うん、わかった」

名前を呼ばれただけで背筋が伸びる~。
そして推しは唐突に……、
『今度一緒にキャンプ行こ!』

「……キャンプ?」

あまりに唐突な誘いに、ナオは足を止めた。

キャンプ?
リキと?ど、どうして?

『ナオちゃん、キャンプ嫌い?』

「嫌いじゃないけど……」

『じゃあ行こ♡』

うわ~軽い~。
近所のコンビニにでも誘うような軽さでキャンプに誘われた。

だけどナオの頭の中では、そんな軽い話では済まない。

キャンプって、二人で?

それって……まさか……デート?

いやいやいや。
昨日会ったばっかりだし!

しかもキャンプって、普通のデートより距離近くない?
ご飯を食べに行くとか、映画を見るとか、そういう段階を全部すっ飛ばしてない?

日帰り?
それとも……え!?まさか!!
と、と、泊まり!?

いや、待て待て待って。リキと2人で泊まりって、それはもう……!

そこまで考えた瞬間、ボンッと顔が熱くなった。

「いやいやいやいやいや!」

『なにが?』

「な、な、なんでもない!」

危ない。
勝手に想像して、勝手に慌ててるって。
何考えてるんだぁわたし!!

リキは何も言ってないのに!

ナオは熱くなった頬を手で扇ぎながら、何とか冷静になろうと深呼吸した。

「……それで、なんで急にキャンプなの?」

『あのねー』

電話の向こうで、リキの声が嬉しそうに弾んだ。
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