おかえりの温度
おかえりの温度
「たっだいまぁ……」
ドアを開けると、ほんのりご飯の香り。「おかえりぃ」と嘉晴の声が聞こえて、一気にお外用スイッチがオフになる。
「はぁぁぁ~……」
「泰子。そんなとこ座り込まないで」
笑った嘉晴が、玄関にうずくまった私を引っ張る。「あぁもう無理ぃ」と言いながら、よろよろと立ち上がってビーズクッションまで連れて行かれ、ぼふりっ、と身体を横たえた。
一時期、人を駄目にするクッションと言われたあれのたぐいだ。疲れ切った私はもう身動きも取れず、手負いの猫みたいに丸くなる。
「……つかれた」
「そうみたいだねぇ」
嘉晴は涼しい顔で言って、首を傾げる。
「帰ってきたら肉焼こうと思ってたんだけど。もう焼いていい? 休んでからにする?」
「んぁあぁぁ……」
めちゃくちゃ悩んで頭を押さえる。
「休みたいけどお腹空いた……」
「うん、俺も空いた。じゃ、焼くね」
「ぁあぅんん……」
目をつぶっているうちに、じゅうじゅう肉が焼ける音といい匂いが漂ってくる。
このまま眠りたい。けどご飯も食べたい。
葛藤している私を察してか、気づいたら嘉晴が横に座っていた。ふぅ、ふぅ、と焼きたての肉を冷まして、私の口元に運ぶ。
「はい、あーん」
「あー……んぐ」
口に放り込まれた肉をもぐもぐして、んむぅと口の端が引き上がる。
「肉うま……」
「うん。がんばった日はたくさん食べよ。試験場の肉安売りしてたから買ってきた」
「マジ~さいこぉ~」
ずるずる這うように食卓に向かう私の腕を、嘉晴が笑いながら引き上げた。
「ほらほら、立って」
「うぅ、つらい……」
「今日ずっと立ちだったの?」
「ポスター撮影が長引いてぇ」
ほとんど半泣きで言いながら、ほとんど嘉晴に寄りかかるようにして椅子へ座った。
ドアを開けると、ほんのりご飯の香り。「おかえりぃ」と嘉晴の声が聞こえて、一気にお外用スイッチがオフになる。
「はぁぁぁ~……」
「泰子。そんなとこ座り込まないで」
笑った嘉晴が、玄関にうずくまった私を引っ張る。「あぁもう無理ぃ」と言いながら、よろよろと立ち上がってビーズクッションまで連れて行かれ、ぼふりっ、と身体を横たえた。
一時期、人を駄目にするクッションと言われたあれのたぐいだ。疲れ切った私はもう身動きも取れず、手負いの猫みたいに丸くなる。
「……つかれた」
「そうみたいだねぇ」
嘉晴は涼しい顔で言って、首を傾げる。
「帰ってきたら肉焼こうと思ってたんだけど。もう焼いていい? 休んでからにする?」
「んぁあぁぁ……」
めちゃくちゃ悩んで頭を押さえる。
「休みたいけどお腹空いた……」
「うん、俺も空いた。じゃ、焼くね」
「ぁあぅんん……」
目をつぶっているうちに、じゅうじゅう肉が焼ける音といい匂いが漂ってくる。
このまま眠りたい。けどご飯も食べたい。
葛藤している私を察してか、気づいたら嘉晴が横に座っていた。ふぅ、ふぅ、と焼きたての肉を冷まして、私の口元に運ぶ。
「はい、あーん」
「あー……んぐ」
口に放り込まれた肉をもぐもぐして、んむぅと口の端が引き上がる。
「肉うま……」
「うん。がんばった日はたくさん食べよ。試験場の肉安売りしてたから買ってきた」
「マジ~さいこぉ~」
ずるずる這うように食卓に向かう私の腕を、嘉晴が笑いながら引き上げた。
「ほらほら、立って」
「うぅ、つらい……」
「今日ずっと立ちだったの?」
「ポスター撮影が長引いてぇ」
ほとんど半泣きで言いながら、ほとんど嘉晴に寄りかかるようにして椅子へ座った。
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