おかえりの温度
サラダとスープ。白いご飯と焼きたてお肉。
ただ食卓に座るだけで出てくるありがたさ。
「……嘉晴はご飯の神様……」
「やだよ。それ、なんかプレッシャー感じる」
プレッシャーは感じなくてもいいけれど、彼も仕事終わりのはずなのに、疲れた気配もなく当たり前みたいにご飯を作って並べてくれていることが本当に奇跡みたいだ。
私の彼氏にしてはできすぎている気がする。
幼なじみにしては、かな?
まあ、どっちでもいいか。
「いただきまぁす」
「召し上がれ」
手を合わせてからお箸を手に取る。スープを一口飲んで、ふぅ、と息をついた。
「……しみわたる……」
「あったかいでしょ。ショウガ入れてみた」
うんうんと、嘉晴のことばにうなずく。あったかいのはスープの温度とショウガだけじゃないよねぇ、と思ったけれど、またプレッシャーと思われたくないから口にはしなかった。
「嘉晴は? 仕事落ち着いてるの?」
「うん。まあまあかなぁ」
私より一年遅れて社会人になった嘉晴は、いつ聞いてもこんな感じだ。
役所って本当に定時で帰れるの、と聞いたことがあるけれど、返ってきたのは「人によるかなぁ」という一言だった。
もちろん、彼も「今日は残ってくるね」ということはあるんだけれど、突発的な残業はあまりないみたい。
「そっかぁ。繁忙期とかないの?」
「年度末と年度始めくらいかなぁ……。泰子ほどぐっちゃぐちゃではないと思うよ」
「そ、そうみたいね……」
おもわず肩をすくめた。地元のラジオ局に勤めて五年。報道系はブラック、と覚悟はしていたけれど本当に他のことに手が回らない。
嘉晴がいなかったら、たぶん私は生きて行けてなかったか、ゴミ屋敷に住んでたと思う。
「いつも、ありがとね」
ちょっと前までは「ごめんね」と言って、嘉晴にやんわりとたしなめられた。
一所懸命仕事しているのは悪いことじゃないし、応援したくてしてることなんだから――と。
最近ようやく違う言葉を言えるようになってきて、嘉晴も微笑んで「どういたしまして」と返してくれる。