年下CEOの専属家政婦ですが『抱き枕』は業務に含ませていません!

①

 彰臣を空港で見送ったのは彼が高校を卒業して直ぐの頃だった。
 御堂財閥の御曹司で、より良い環境を求めアメリカの大学へ進学したのをきっかけに渡米したのだ。
「これで私の役目も終わったな」
 私は飛び立つ飛行機を眺めながら呟いて、御堂家専属の家政婦を辞めた。

 高校生の頃、家事代行のバイトとして御堂家に通うようになり、高校卒業と共に引き抜かれ、そこからは直雇用として働いていた。

 御堂家に通い始めた頃はまだ七歳だった彰臣専属の使用人みたいな状態だったため、学校や習い事の送迎から始まり、食事や掃除などの家事業務、遊びの相手に至るまで世話をしていて、実質私が親代わりのようなものだった。

 彰臣は——家政婦の中では——歳の近い私によく懐いてくれていたし、甘え上手で褒め上手な彼の世話は楽しかった。
『将来はオレが、美織をお嫁さんにしてやるから』なんて、生意気に口説いてくれるのも嬉しかった。
『佐伯美織さん、俺と結婚してください』と、本人を目の前に練習している時には思わず笑ってしまったのも鮮明に思い出せる。
 
 家事代行の時代から計算すれば約十一年もの間、彰臣と一緒に過ごしたことになる。

 そんな御堂家から離れようと決意したのは、自分には人生の目標が何もないと気付いたからだ。

 高校生の頃に両親が離婚し、自分の居場所を求めるようにアルバイトを始めた。家事代行という職種は幸いにも自分と相性が良く、楽しくてのめり込んだ。学生の頃はそれで良かったし、彰臣に仕えている間も充実した毎日を送っていた。

 けれど、七歳も年下の彼が親の会社とは別に自分も起業する夢があると語ってくれた時、自分が空っぽな存在だと感じてしまった。

 彰臣が渡米したのは寂しさもあるけれど、良いタイミングでもあった。

 保育士を目指して短期大学へ進学し、運よく就職もできた。仕事を始めて二年が過ぎ、少し仕事にも慣れてきて、このまま保育士としての道を進むものだと思っていた。
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