年下CEOの専属家政婦ですが『抱き枕』は業務に含ませていません!

②

 御堂家のことをだんだん思い出さないようになってきた、秋の風を感じるとある日、残された一件の着信履歴が私の人生の転機となる。

「……彰臣くんだ」
 懐かしい名前が記録されていた。

 連絡先が変わっていなかったのも驚いたが、私に用事があるとも考えられない。
 間違い電話……? とも思ったけれど無視するわけにもいかず、アパートに帰ってから掛け直してみた。

『美織?』
「彰臣くん……ですよね。お久しぶりです。あの、着信が残ってて。それで……」
『あぁ』

 記憶しているよりも随分と大人びた声のトーンにドキリとしてしまう。思わず敬語で話してしまった。

『何だ? たったの四年でそんな他人行儀になるのか』
「連絡が来るなんて思ってなかったからビックリして、つい……。帰国したの?」
『つい先日な。一番に美織に会いたかったのに、辞めたと聞いて連絡をせずにはいられなかった。御堂家で何かあったのかと思って』
「何もないよ。自分の夢に向かって頑張ってる彰臣くんを見て、私も自分なりに頑張ってみようと思っただけ。今は、保育士として働いてる」
『そっか……。それ、辞めろ』

 唐突に言われて「えっ」と固まってしまった。

 受験勉強だって頑張って、ずっと年下の子に混じって短大に通い、戸惑いながらも何とか頑張ってきた。それを簡単に辞めろなんて言われるとは思いもよらない。

 何故そんな身勝手なことが言えるのか。
 自分は努力を惜しまないのに、私が私のために努力するのは無意味だとでも言いたいのか。
 辞めれば子供達にも会えなくなる。よくも簡単に言えたものだ。
 色んな感情が一気に湧き上がってきて、返す言葉が見つからない。

『辞めて、俺の許に帰ってこい』
 戸惑う私に、彰臣は淀みなく言い放った。
『俺は美織しか考えられない』と。
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