放課後、秘密の特別教室。〜イケメンな精霊たちは、私をあきらめない〜
第19章:仮面の迷宮、それぞれの告白
美術室の前にたどり着いた私たちは、その異様な光景に言葉を失った。
そこはもう、私の知っている学校の美術室ではなかった。美術室の入り口のドアは完全に消失し、代わりに中には、無数の「巨大な白い仮面」が意志を持っているかのように不気味に宙を浮遊する、おどろおどろしい異界が広がっていた。
床は、色とりどりの絵の具をデタラメにぶちまけて混ぜ合わせたような、ドロドロとした黒紫色の液体で満たされていて、ただそこに立つだけで、足元から精神がジワジワと汚染されていきそうなほどの悪臭と寒気が這い上がってくる。
「ウフフ、来たわね、鍵のマスター。そして、私の芸術の邪魔をする目障りな精霊たち」
美術室の中央、部屋の半分を占めるほどの巨大な白いキャンバスの前に、美咲さんが立っていた。彼女の瞳はドス黒く濁っており、その背後からは、黒い霧で作られた巨大で不気味な手が何本も、生き物のようにうねうねと伸びている。
「さあ、あなたたちの『本当の姿』も、このキャンバスに描いてあげる! 綺麗事を並べているあなたたちの誰が一番、醜い心を持っているかしら!?」
美咲さんが狂おしく両手を振ると、宙に浮遊していた無数の巨大な仮面が一斉にカタカタと音を立て、凄まじい速度で私たちに向かって突撃してきた。
「くそっ、この負のエネルギーの質量は計算外だ! 防御が追いつかない!」
蓮くんが瞬時に光の数式によるバリアを張るが、突撃してくる仮面が放つ、強烈な「人間の精神攻撃」の波動によって、パリン、パリンとバリアにヒビが入り始める。
「蓮、下がりなさい! ボクの音楽で、この偽りの仮面をすべて叩き割ってあげる!」
響くんが虚空に光の鍵盤を生み出し、激しい戦闘の旋律(ソナタ)を奏でた。音の波動が空気の弾丸となって飛び、いくつかの仮面を粉砕していく。
しかし、壊れた仮面から溢れ出た、美咲さんや生徒たちの生々しい「負の感情」の霧が、響くんの体を直接包み込んだ。
「う……あ、あたまが……」
突然、響くんの動きがピタリと鈍くなり、その場に膝をついた。彼のきらきらとした瞳が、急に深い絶望に染まっていく。
「……うっ、ボクは……ボクはただ、みんなに愛されたいだけなのに……。ボクの音楽を聴いて、ボクだけを見てほしいのに……。どうして、みんなボクを置いていっちゃうの……? ボクは、一人になるのが怖いんだ……」
響くんの心の奥底に深く隠されていた「見捨てられ不安」と「孤独への恐怖」が、霧の精神攻撃によって無理やり引き出されてしまったのだ。
「響くん! しっかりして、起きて!!」
私が必死に叫んだその瞬間、美咲さんの背後から伸びた巨大な黒い霧の手が、隙を突いて私に向かって容赦なく振り下ろされた。あまりの速度に、避けることもできない。
(しまっ――)
恐怖に目を瞑った、その時。
ドォン!!!
凄まじい衝撃音が美術室に響き渡り、私の前に大きな背中が立ちはだかった。
律くんだ。彼は、生徒会の金色のバッジから放たれる、圧倒的で一点の曇りもない真っ白な『規律の光』の盾で、美咲さんの霧の手を真っ向から受け止めていた。凄まじい衝撃に彼の足元がガタガタと震える。けれど、彼は絶対に後ろに引かなかった。
「小鳥遊、前を見ろ! あいつらの心の闇に気を取られるな! 君が鍵のマスターなら、弱気になるな。己の確固たる意思で、この混沌とした空間を支配してみせろ!」
律くんの、いつもの厳しい、けれどその奥に私を100%信じてくれている熱い声が、私の凍りついていた胸の奥に深く、深く突き刺さった。
(そうだ……私は、みんなのマスターなんだ。守られてばかりじゃダメ。私がみんなを信じなきゃ、誰がみんなを救うの……!?)
「……うん! 私、もう絶対に逃げない!」
私はポケットから、あの真鍮の古い鍵を取り出すと、目の前の暗闇を切り裂くように、五人の精霊たちに向かって高く掲げた。
「みんな……私の声を聴いて! 完璧な人なんて、この世界のどこにもいないよ! 寂しくなったり、誰かを羨ましく思ったり、怖いところがあったって、それは恥ずかしいことじゃない! 私は……私はそんな弱いところも含めて、みんなのことが大好きなんだから! だから、お願い……自分を醜いなんて思って、嫌いにならないで……っ!」
私の心の底からの、涙が混じった魂の叫びが、鍵から放たれた目も眩むような黄金色の光の波動となって、五人の精霊たちの魂へとダイレクトに流れ込んでいった。
「マスター……君という人は、本当に僕の論理的思考を狂わせる……」(蓮)
「紬ちゃん……! ごめんね、ボク、もう大丈夫。キミのために、世界で一番美しい歌をもう一度歌うよ!」(響)
「君のその言葉が、僕の閉ざされた新しい世界の法則になる。ページを開こう」(司)
「はは、可愛いマスターにそんな熱い告白をされたら、男として頑張るしかないよねぇ」(千歳)
「……フン。よく言った、小鳥遊。僕の絶対的な規律に、今、君のその『無鉄砲な想い』を最高法規として付け加えておこう」(律)
五人の精霊たちの瞳が、絶望を振り払って、これまでにないほど力強く輝き始めた。彼らの魂が抱えていた小さな闇が、私の全肯定の言葉によって、完全に浄化されたのだ。
そこはもう、私の知っている学校の美術室ではなかった。美術室の入り口のドアは完全に消失し、代わりに中には、無数の「巨大な白い仮面」が意志を持っているかのように不気味に宙を浮遊する、おどろおどろしい異界が広がっていた。
床は、色とりどりの絵の具をデタラメにぶちまけて混ぜ合わせたような、ドロドロとした黒紫色の液体で満たされていて、ただそこに立つだけで、足元から精神がジワジワと汚染されていきそうなほどの悪臭と寒気が這い上がってくる。
「ウフフ、来たわね、鍵のマスター。そして、私の芸術の邪魔をする目障りな精霊たち」
美術室の中央、部屋の半分を占めるほどの巨大な白いキャンバスの前に、美咲さんが立っていた。彼女の瞳はドス黒く濁っており、その背後からは、黒い霧で作られた巨大で不気味な手が何本も、生き物のようにうねうねと伸びている。
「さあ、あなたたちの『本当の姿』も、このキャンバスに描いてあげる! 綺麗事を並べているあなたたちの誰が一番、醜い心を持っているかしら!?」
美咲さんが狂おしく両手を振ると、宙に浮遊していた無数の巨大な仮面が一斉にカタカタと音を立て、凄まじい速度で私たちに向かって突撃してきた。
「くそっ、この負のエネルギーの質量は計算外だ! 防御が追いつかない!」
蓮くんが瞬時に光の数式によるバリアを張るが、突撃してくる仮面が放つ、強烈な「人間の精神攻撃」の波動によって、パリン、パリンとバリアにヒビが入り始める。
「蓮、下がりなさい! ボクの音楽で、この偽りの仮面をすべて叩き割ってあげる!」
響くんが虚空に光の鍵盤を生み出し、激しい戦闘の旋律(ソナタ)を奏でた。音の波動が空気の弾丸となって飛び、いくつかの仮面を粉砕していく。
しかし、壊れた仮面から溢れ出た、美咲さんや生徒たちの生々しい「負の感情」の霧が、響くんの体を直接包み込んだ。
「う……あ、あたまが……」
突然、響くんの動きがピタリと鈍くなり、その場に膝をついた。彼のきらきらとした瞳が、急に深い絶望に染まっていく。
「……うっ、ボクは……ボクはただ、みんなに愛されたいだけなのに……。ボクの音楽を聴いて、ボクだけを見てほしいのに……。どうして、みんなボクを置いていっちゃうの……? ボクは、一人になるのが怖いんだ……」
響くんの心の奥底に深く隠されていた「見捨てられ不安」と「孤独への恐怖」が、霧の精神攻撃によって無理やり引き出されてしまったのだ。
「響くん! しっかりして、起きて!!」
私が必死に叫んだその瞬間、美咲さんの背後から伸びた巨大な黒い霧の手が、隙を突いて私に向かって容赦なく振り下ろされた。あまりの速度に、避けることもできない。
(しまっ――)
恐怖に目を瞑った、その時。
ドォン!!!
凄まじい衝撃音が美術室に響き渡り、私の前に大きな背中が立ちはだかった。
律くんだ。彼は、生徒会の金色のバッジから放たれる、圧倒的で一点の曇りもない真っ白な『規律の光』の盾で、美咲さんの霧の手を真っ向から受け止めていた。凄まじい衝撃に彼の足元がガタガタと震える。けれど、彼は絶対に後ろに引かなかった。
「小鳥遊、前を見ろ! あいつらの心の闇に気を取られるな! 君が鍵のマスターなら、弱気になるな。己の確固たる意思で、この混沌とした空間を支配してみせろ!」
律くんの、いつもの厳しい、けれどその奥に私を100%信じてくれている熱い声が、私の凍りついていた胸の奥に深く、深く突き刺さった。
(そうだ……私は、みんなのマスターなんだ。守られてばかりじゃダメ。私がみんなを信じなきゃ、誰がみんなを救うの……!?)
「……うん! 私、もう絶対に逃げない!」
私はポケットから、あの真鍮の古い鍵を取り出すと、目の前の暗闇を切り裂くように、五人の精霊たちに向かって高く掲げた。
「みんな……私の声を聴いて! 完璧な人なんて、この世界のどこにもいないよ! 寂しくなったり、誰かを羨ましく思ったり、怖いところがあったって、それは恥ずかしいことじゃない! 私は……私はそんな弱いところも含めて、みんなのことが大好きなんだから! だから、お願い……自分を醜いなんて思って、嫌いにならないで……っ!」
私の心の底からの、涙が混じった魂の叫びが、鍵から放たれた目も眩むような黄金色の光の波動となって、五人の精霊たちの魂へとダイレクトに流れ込んでいった。
「マスター……君という人は、本当に僕の論理的思考を狂わせる……」(蓮)
「紬ちゃん……! ごめんね、ボク、もう大丈夫。キミのために、世界で一番美しい歌をもう一度歌うよ!」(響)
「君のその言葉が、僕の閉ざされた新しい世界の法則になる。ページを開こう」(司)
「はは、可愛いマスターにそんな熱い告白をされたら、男として頑張るしかないよねぇ」(千歳)
「……フン。よく言った、小鳥遊。僕の絶対的な規律に、今、君のその『無鉄砲な想い』を最高法規として付け加えておこう」(律)
五人の精霊たちの瞳が、絶望を振り払って、これまでにないほど力強く輝き始めた。彼らの魂が抱えていた小さな闇が、私の全肯定の言葉によって、完全に浄化されたのだ。