放課後、秘密の特別教室。〜イケメンな精霊たちは、私をあきらめない〜
第24章:失われた鍵の記憶と、真の契約
時計塔の最上階。
ビルほどもある巨大な真鍮製の大歯車が、凄まじい音を立てて逆回転している、世界の終わりのような場所。
その大歯車の中心、赤く燃え盛るコアの前に佇んでいたのは――図書室の、司くんだった。

彼の身体もまた9割以上が透けており、瞳は底知れない漆黒の闇に染まっている。

「……ついに、ここまで来ましたね、お嬢さん。百年前、初代マスターが僕たちに施した呪い――『人間と精霊は、決して交わってはならない』という絶対のルールが、今、発動しているのです。さあ、君の命を僕たちにくれれば、僕たちは元の綺麗な精霊に戻ることができます」

司くんが、冷たい、けれどどこか泣きそうな歪んだ笑顔で、私に手を差し伸べてきた。

(違う……。そんなの、絶対に違う……っ!)

私は、ポケットから拾い集めたみんなの遺品を、強く胸に抱きしめながら叫んだ。

「そんなの間違ってる!! 百年前のマスターがどんなルールを作ったかは知らない! でも、今のマスターは私だ!! 私たちの規律(ルール)は、私たちが決める!!」

私は真鍮の鍵を、両手で天高く掲げた。
その瞬間、私の胸の中のみんなの遺品が、まばゆい五色の光となって弾け、真鍮の鍵へと吸い込まれていった。

キィィィィィィィィン!!!!!

鍵の表面の錆びが完全に剥がれ落ち、圧倒的な『黄金の記憶の光』が時計塔全体へと解き放たれた。私の頭の中に、百年前の本当の記憶が流れ込んでくる。

病床で息を引き取ろうとしている初代マスターの少女は、泣いている五人の精霊たちに優しく微笑みかけていた。

『みんな、泣かないで……。私は死んじゃうけど、君たちを縛るために鍵を作ったんじゃない……。いつか、私よりももっと強くて、もっと優しくて、君たちの弱いところも全部愛してくれる、本物のマスターが綺麗に鍵を開けてくれる日のために……この時計塔で、待っていて……』

初代マスターの本当の願いは、交わりを断つことではなく――未来のマスターである私と、精霊たちが、本当の家族になれる日を信じて『待つ』ことだったのだ。

「これが……本当の……記憶……っ!」

司くんの瞳から漆黒の霧が完全に消え去り、彼は目を見開いて涙を流した。

「さあ、書き換えるよ! 時計塔の、古い規律を!!」

私は、黄金に輝く真鍮の鍵を、中央の巨大な大歯車の中心にある鍵穴へと、迷わずに力一杯突き刺し――そして、右へと力強く回した。

ガシャリ!!!!!

心地よい、完璧な噛み合わせの音が響き渡り、逆回転していた無数の歯車が完全に停止した。
そして、チクタク、チクタクと、今度は正常な未来へと進む秒針の音とともに、すべての歯車がまばゆい五色の光を放ちながら、正回転を始めた。

空には、見たこともないほど美しく、澄み切った、まばゆい朝の光が差し込んでくる。

「……あ……」

私の目の前で、光の粒子が集まり、信じられない奇跡が起き始めていた。

「フン……。随分と派手なシステム構築をしてくれたものだな、小鳥遊」

光の中から最初に現れたのは、いつもの絶対君主――律くんだ。彼は私の手から白手袋を優しく受け取ると、最高に優しい笑みを浮かべた。

「紬ちゃん!! 会いたかったぁーーーっ!」

次に飛び出してきた響くんが、私の腰に思いっきり抱きついてきた。しっかりと重くて温かい、本物の彼の体温がそこにあった。

「マスターの心拍数、および生体エネルギーの回復を確認。……全く、最高のマスターだよ、君は」

蓮くんがメガネを指で押し上げながら、嬉しさを隠しきれない様子で私を見つめている。

「はは、本当だねぇ。こんなに命がけで迎えに来てもらっちゃったら、もう一生、離れられなくなっちゃうよね?」

千歳くんが、私の後ろからそっと長い腕を回し、私の耳元で優しく囁いた。

「おかえりなさい、僕たちの、新しい世界のマスター」

最後に、司くんが私に向かって深く、紳士的な一礼を捧げた。彼の持つ本には今、私と五人の精霊たちが紡いできた、新しい物語の文字が黄金色に輝いていた。

窓の外からは、時間が動き出した生徒たちの、賑やかな笑い声が遠くから聞こえてくる。

五人の超絶イケメンな精霊たちと、地味な私の、本当の絆の物語。
新しく生まれ変わった私たちの放課後は、これからもずっと、この進み始めた時間の中で、どこまでも、どこまでも甘く賑やかに続いていくのだった。
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