冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 ーーこの人、話が早い。


 それが、何度目かの会議で私が抱いた感想だった。


「この設備についてですが」

「三年目から導入しましょう」

「……即決ですか?」

「必要性はわかっています。ただ、今期に入れる必要はない」

「ですが、先生が最初に出した案では――」

「最初の案より、今の案のほうがいい」


 あっさりと変えてしまう。

 彼は決して、自分が最初に出した案に執着しない。


「先生、自分の案を変えるの、抵抗ないんですか?」


 思わず聞いてしまった。

 宗形先生は不思議そうに私をまじまじ見ると、


「より良い方法があるなら、変えるのが普通でしょう」


 そう何でもないことのように言い切った。

 その言葉に、少しだけ驚く。

 この人は、自分のプライドを守るために仕事をしているわけではない。

 望みは最初から一つで、“患者さんを救うこと”が全てだ。



< 19 / 79 >

この作品をシェア

pagetop