冷静な天才外科医の弱点は、私でした
それでもわかった。
この人は、本当にすごい。
「宗形先生、やっぱり判断が迅速で的確だな」
「この間、難しい症例も任されてたよね」
内緒話が聞こえてくる。
私と同じように別室で見学にしているスタッフたちだ。
「接遇委員会の身だしなみチェックでも一度も引っかかったことないって話だよ」
「そこまで完璧なわけ?」
「一つくらい弱みがありそうなもんなのにねぇ」
おしゃべりは終わらず、どんどんと脱線していく。
「家ではすっごいだらしないとか」
「それが家事もできるんだって。石川先生から聞いた」
「いよいよ超人じゃん」
前のほうに座っていた教授が、とうとう咳払いをして声がピタリと止んだ。
……彼はただ「有名な先生」ではない。
宗形圭という人間そのものが、すごいのだと今は思う。
そう認めるようになってから、私は彼と仕事をすることが少しだけ楽しみになっていた。