冷静な天才外科医の弱点は、私でした
ほんの少し遅い瞬き。
それに手術が終わったばかりなのに、もう次の資料を確認しようとしている。
寝ている人の顔ではない。
「そうですか」
私はそれ以上言わなかった。
その日の夕方、宗形先生のデスクに栄養ドリンクを一本置いた。
「……これは?」
「お疲れでしょうから」
少し充血した目が向けられた。
「必要ありません」
「そう言うと思いました」
「なら、なぜ?」
「先生、成功したら疲れないわけじゃないでしょう」
宗形先生が口をつぐみ、私は少しだけ笑う。
「飲んでください」
「……仲山さん」
「はい?」
「あなたは、人のことをよく見ていますね」
思いがけない言葉だった。
「仕事柄です」
そう答えた。
本当は、たぶんそれだけではない。
私は昔から、人の顔を見る癖がある。
疲れている人。
無理をしている人。