冷静な天才外科医の弱点は、私でした
私は、少しだけ宗形先生を意識している。
そう認めるのが怖かった。
だって彼は私にとって、最高の仕事相手だった。
信頼できる人で尊敬できる人。
それだけで十分だったはずなのに。
「……仕事に集中しよう」
私は小さく呟いた。
「そうしよう」
「誰に言ってるの?」
「自分に」
千春がカラカラと笑った。
「それ、もう意識してる人の言い方だよ」
「千春!」
私は顔を覆った。ズバズバ言ってくるところはいつもならありがたいけれど、今回ばかりは別だ。
ただその日の帰り、廊下ですれ違った宗形先生を自然に目で追った。
宗形先生は、少し離れたところで振り返る。
ほんの数秒、視線が合った。
私たちは、どちらからともなく視線を逸らす。
まだ恋とは呼べない。
けれど、仕事だけでは説明できない何かが、確かに私たちの間に生まれ始めていた。