冷静な天才外科医の弱点は、私でした
その日の昼休み、千春に会った瞬間。
「ひかる、どうしたの? 顔赤い」
「嘘だ」
「赤い」
千春が私をじっと見る。居心地が悪くて、とっさに目を逸らした。
「宗形先生?」
「違う!」
「まだ何も言ってないけど」
完全に負けた。こういう話題だと絶対に千春からは逃げられない。
「何があったの?」
「髪型に気づかれただけ」
「誰に?」
「……宗形先生」
千春の目が輝いた。
「ほら、やっぱり!」
「何がやっぱり?」
「宗形先生、ひかるのことめちゃくちゃ見てるじゃん」
「……仕事だから」
「髪型まで?」
「……」
「ね?」
私は答えられなかった。
千春は楽しそうに笑う。
「ひかる、もしかしてちょっと意識してる?」
「してない」
即答したけれど、その答えを口にした瞬間、自分で自分に嘘をついた気がした。