冷静な天才外科医の弱点は、私でした
私が目を瞬かせると、高瀬先生は人懐こい笑顔を見せた。
「そんなこと、よく覚えてましたね」
「覚えてるよ」
高瀬先生がゆっくりと近づく。
「俺、仲山さんには新人の頃から世話になってるから」
「私がですか?」
「そう」
高瀬先生が懐かしそうに笑う。
「俺がこの病院に来たばっかりの頃、覚えてる?」
「覚えてます」
高瀬先生は以前、別の病院からここへ異動してきた。
当時は新しい環境に慣れず、経営企画部への書類提出も何度か間違えていた。
「最初の予算申請、三回差し戻されましたよね」
「いや四回だったよ」
「四回かぁ……」
「そう。しかも四回目は、仲山さんに『ここで一緒に書きましょう』って言われた」
「……そんなことありました?」
「あったよ」
高瀬先生が窓に顔を向けた。横顔がオレンジ色に染まって、私もつられるように窓の外へと視線を滑らせる。