冷静な天才外科医の弱点は、私でした
「で、そのあと仲山さんが一時間付き合ってくれた」
「ああ、あれですか」
当時の私はまだ今ほど仕事に慣れていなかった。
それでも、高瀬先生が困っているのを見て放っておけず、一緒に申請書を作り直したのだ。
「先生、あのとき泣きそうな顔してましたよ」
「そんなことないって」
「恥ずかしがることないでしょうに」
「してない」
二人で笑い合う。
「だから、俺は仲山さんには頭が上がらないんだよ」
「大げさです」
「いや、本当に」
高瀬先生が少し真面目な顔になる。
「俺がここでやっていけたの、仲山さんのおかげでもあるから」
「……仕事ですから」
「それでもだよ……だから、たまには俺が仲山さんを労おうかなって」
その言葉に、私は少しだけ迷ってから頷いた。
「じゃあ……行きましょうか」
「そうこなくちゃ」
高瀬先生が嬉しそうに笑った。