極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
一章
「今日の烏龍茶はスッキリと名間四季春の水出しアイスティーと、ペアリングは桃のしっとりパウンドケーキがおすすめです!」
小さな私のお店に私の元気な声が響く。
すると目の前の女子二名のお客様はにっこりと笑って「じゃあ、それで」と言った。
「ありがとうございます。では用意してきますね」
私も笑顔で返事してキッチンへと向かう。
その背後でお客様の声が聞こえる。
「ね、ここのお店いい感じでしょ。最近出来たばかりの穴場よ」
「うん。レトロな商店街の中にあって隠れ家みたいでお店も可愛いし、ウーロン茶が美味しいんだよね?」
「そう! とってもおすすめなの。デザートも美味しくてね」
──と、楽しそうな会話に私の心も弾む。
あぁ、お客様。
ありがとうございます。パウンドケーキ、ちょっぴり厚めに切っておきますね。
などと思いながら、私はテキパキと厨房でお茶の用意をする。
私のお店『春福里』
お茶が好き過ぎて作った私のお店だ。
美味しい烏龍茶やおやつを提供している。小さいけれど、自慢の城。
カウンター席が四つに、二名掛けのテーブル席が二つ。従業員は私だけ。
かつて亡き祖父母が営んでいた硝子食器店を私が譲り受け、リノベーションやDIYを駆使しながらカフェに改装した、半年前にオープンしたばかりのお店だ。
「まぁ、ここに至るまで補助金の申請とか、保健所とか、融資とか融資とか、大変だったんだけどね……っと。愚痴は言わないっ」
つい、本音が漏れてしまったが、お客様の前では笑顔だ。
雛乃茉莉二十五歳。元気だけが取り柄なんだからと自分に言い聞かせる。
気持ちを切り替えて食器棚の前に立つ。
そこからモダン硝子のコップを二つ取り、冷凍庫から氷をカラカラと入れる。