極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
お客様の凌さんに話すのは少々躊躇われたが、凌さんは青年実業家だと言うし、私にはないアイディアがあるかもと、藁に縋るような気持ちで話した。

「──今、この商店街はピンチなんです。だからお祭りで売り上げをどうやって伸ばそうかなって」

案としては屋台の出店数を増やす。
地元のご当地アイドル、バンドの人を呼ぶ。
目玉のイベントとして、漫才師や芸人さんを呼ぶ計画も出ているが──。

商店街の会費・積立金、自治体の補助金を使ってもお金が足りない。なんたって売り上げは二倍を目指さなくてはいけないのだ。人件費だってある。

せめて、屋台のレンタル費用を安く浮かせられたら、かなり費用は抑えられるのにと、つらつらと考えたとき。

アイスティーのカランと氷の澄んだ音がしてハッとした。
いつの間にか凌さんはアイスティーを全部飲み切り、テーブルに置いてあった資料達をパラパラと捲っていた。

私の視線に気がつくと凌さんは「すまない。勝手に見てしまった」と言った。

「大丈夫です。この町に住む人であれば誰でも見れるものですから……私こそ、愚痴っぽくなってしまい、すみませんでした」

私の謝罪に凌さんは軽く横に頭を振った。

「それよりも気になるのが、金のネックレスを付けた新しい会長……か。なるほど。ことの成り行きは読めた。茉莉、提案だ」

凌さんが回覧板をトンと、叩いた。

「え」

「俺からこの店に協賛金として金を寄付しよう。幾ら必要だ」

「えっ、ええっ!?」

「税金の面は税理士に確認させる。一応税務署から疑われない為に、新しい口座と領収書と帳簿を用意しておいたらいい。好きな金額を言え。明日にはネットバンキングから振り込もう」

凌さんは他愛のない世間話をしているように、小皿に入ったナッツを摘んでゆく。
< 16 / 38 >

この作品をシェア

pagetop