ケンカの天才は、王子様に勝てない。
全く表情を変えないで、ふんっと鼻で息をした。

真面目な顔で言うからこれは本気、本気と書いてマジって読むくらい本気で。

「そーだぞ三千華!ちょー可愛いオレらの妹に何かあったらにーちゃん困るんだよぉ~!」

そんでもってこっちのお兄ちゃんは顔をすりすりしながら泣いてるから。

だからそんなにかわいくないし、そんなに弱いやつでもないし、心配しすぎなのに…


「三千華は俺たちの大事な妹なんだよ」


そんな目で見られたら、何も言えなくなっちゃって。

「だから三千華、ちゃんと門限は守るように」

「…はい」

コクンとうなづくしかできなくて。

だってそしたらさっきまであんなに怖かった慎一お兄ちゃんがぽんぽんって頭をなでるから、慎一お兄ちゃんの手は誰より大きくてなんかこそばゆいし。

あたしは心配されるほど弱くないけど、お兄ちゃんにはちょっと弱い。

それにこれで済むならいい方だから、これ以上何か言われたらー…


「それともう1つ」


ずんっと慎一お兄ちゃんの声が低くなった。それにビクッとしちゃって、顔が引きつる。


あ、やっぱバレてた?

門限過ぎて怒られる方が断然マシだって思っちゃったんだけど…


「ケンカはしてないだろうな?」
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