ケンカの天才は、王子様に勝てない。
おそるおそる顔を上げる、なるべく引きつった顔を見せないようにいっそのこと笑って見せるみたいに。

「し、してないよ!ケンカなんかするわけないし!!」

やばい、またギロッて怖い目してる。

慎一お兄ちゃんにじーっと見られて心臓がバクバクしてた、ぽんぽんされてた手は止まってそこから伝わっちゃうんじゃないかって…

「ならいい」

これでもかってほどつり上げてた眉毛はへにょんっとして、ギロッとしてた目はなくなっちゃうほど細くなった。
くしゃくしゃな顔で笑って、またあたしの頭をなでるから。

その顔にホッとして、一気に体の力が抜ける。

「三千華、ケンカなんかするんじゃないぞ」

これは慎一お兄ちゃんの口ぐせ。

何度あたしに言ってきたかわからない。
わかるけどね、あたしにケンカしてほしくない気持ちは。

こうやって1分門限を過ぎただけでこんなに心配してくれるんだから、その気持ちはわからなくもないけど。

「よし、じゃあ今日も稽古するぞ」

「おっけ~~~!じゃあ、やるかぁ~~~~!!」

パッとあたしから離れた彰二お兄ちゃんが大きな声で叫んだ。
グーにした両手を天井につき上げて気合いを入れる。


そしてこれはあたしたちの日課、毎日のルーティン。

これがないと1日が終わった気がしないし、明日を迎えられない。
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