強欲の公爵と呼ばれた元護衛騎士は、私と結婚するためだけに成り上がったらしい
視線を感じて顔を上げると、ライカンが睨んでいる。アーリアは心臓に針を刺されたような痛みを感じ、視線を避けた。
「わたくし、疲れました。先に休んでも?」
「部屋までお連れします」
眉間に力が入ったままライカンが言うので、アーリアはため息が吐きたくなった。
「いいえ。公爵までいなくなれば、主催である皇后陛下が困ります。侍女と戻るのでお気遣いなく」
「‥‥分かりました。殿下、以前のように呼んでいただいて構いませんと言ったはずですが」
「いいえ。それは本心じゃありませんでしょう?」
アーリアはそう言うと扉に向かって歩き始めた。ライカンが何か言おうと動いたが、アーリアは足早に会場から出た。
以前のように、好意を込めて名前を呼べるはずがない。
(だってあの頃は、少なくとも嫌われていないと思っていたのだもの)
護衛騎士は専属ではない。複数の皇妃達の中でも、アーリアの母は身分も低く後ろ立てもなかった。そのため、先んじてアーリアの護衛をしようとする者はいなかった。しかしライカンはいつもアーリアを優先して護衛してくれた。いつもアーリアのもとに一番に駆けつけてくれていた。早くに母も亡くし、孤独だったアーリアはそれがとても嬉しかった。
そういう事もあり、アーリアはライカンが無欲なのだと思っていた。出世欲もないだろうと。だから再会した時に驚いたのだ。公爵家の四男であったライカンが、兄達を押し退けてたった三年で公爵位を引き継いだのだから。
さらに公爵位だけではなく、ライカンは帝国の宰相の座にも就いていた。誰もが言った。
「あれだけの才をなぜ隠していたのか」と。
脅威の速さでのし上がるライカンを、人々は畏怖し、「強欲のライカン」と嘲笑う者達も居た。ライカンはそういう者たちを次々と貴族会から消し、自身の立場を強固にしていった。
「わたくし、疲れました。先に休んでも?」
「部屋までお連れします」
眉間に力が入ったままライカンが言うので、アーリアはため息が吐きたくなった。
「いいえ。公爵までいなくなれば、主催である皇后陛下が困ります。侍女と戻るのでお気遣いなく」
「‥‥分かりました。殿下、以前のように呼んでいただいて構いませんと言ったはずですが」
「いいえ。それは本心じゃありませんでしょう?」
アーリアはそう言うと扉に向かって歩き始めた。ライカンが何か言おうと動いたが、アーリアは足早に会場から出た。
以前のように、好意を込めて名前を呼べるはずがない。
(だってあの頃は、少なくとも嫌われていないと思っていたのだもの)
護衛騎士は専属ではない。複数の皇妃達の中でも、アーリアの母は身分も低く後ろ立てもなかった。そのため、先んじてアーリアの護衛をしようとする者はいなかった。しかしライカンはいつもアーリアを優先して護衛してくれた。いつもアーリアのもとに一番に駆けつけてくれていた。早くに母も亡くし、孤独だったアーリアはそれがとても嬉しかった。
そういう事もあり、アーリアはライカンが無欲なのだと思っていた。出世欲もないだろうと。だから再会した時に驚いたのだ。公爵家の四男であったライカンが、兄達を押し退けてたった三年で公爵位を引き継いだのだから。
さらに公爵位だけではなく、ライカンは帝国の宰相の座にも就いていた。誰もが言った。
「あれだけの才をなぜ隠していたのか」と。
脅威の速さでのし上がるライカンを、人々は畏怖し、「強欲のライカン」と嘲笑う者達も居た。ライカンはそういう者たちを次々と貴族会から消し、自身の立場を強固にしていった。