強欲の公爵と呼ばれた元護衛騎士は、私と結婚するためだけに成り上がったらしい
侍女を下がらせ、部屋のバルコニーに出たアーリアは溜めていた息を吐いた。

(‥‥はぁ。あの頃の無欲なライカンはもういないのよ。だからわたくしは、ライカンがもっと権力を得れるように力になればいいのだわ)

今は避ける程嫌われていようと、あの頃の幼かったアーリアが救われたことには変わりない。アーリアに出来ることがあるなら、ライカンの力になりたい。そうすれば、以前のようにとはいかずとも、またアーリアに微笑いかけてくれるかもしれない。

暗い庭園を見渡し、アーリアは人影を見つけた。ライカンと敵対しているコンラッド侯爵令息だ。アーリアはニヤリと笑い、ドレスをたくし上げた。伊達に昔から護衛騎士を困らせていた訳ではない。
ライカンがアーリアを一番多く護衛したのも、お転婆だったアーリアに付いて来れるのがライカンだけだった事も理由の一つだ。

アーリアは慣れた手付きで格子を掴み飛び越えると、手頃な木に飛び移りするすると降りた。久しぶりの立ち回りだが、危なげなく降りれた事にアーリアは嬉しくなった。
身を低くし、茂みに隠れるように移動する。


「公爵も正気じゃない」

イライラとした耳障りな声にアーリアは動きを止めた。

「大きな声を出すな。ここはまだ皇城だぞ」
「ですが父上。腹が立たないのですか?皇室との繋がりが出来たからと偉そうに」
「エスクードも取るに足りない。やはり昔から教育を受けていないからな。公爵の器ではないのさ。皇室との繋がりも強固ではない。‥‥私生児だからな」
「えっ‥‥父上、それは本当なのですか」
「ああ。私生児に何が出来ると言うんだ。早く馬車まで行くぞ。皇城で話す事ではない」


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