ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『端的に言って恋だった』水守恵蓮/著
――一体なにが起きているのだろう……?
静かなパニックでバグる思考回路を、私は必死に軌道修正しようと試みた。
その一瞬前までは、一応普通の会話が成立していたはずだった。
けっして、楽しく和やかな雰囲気ではない。
私が投げた質問に淡々とではあるものの、短く答えてはくれる――どう見ても相手の方は気が乗らない様子ではあっても、私の目的は十分叶えられていたんだからそれでいい。
ところが今、私と彼がいる部屋の空気が、一瞬にして凍りついた。
「へえ……。つまり私はか弱い女性的な男……そういうことですか」
チクリを通り越してグサグサと刺さるような嫌み。
そうでなくても、最後に投げた私の質問が、彼の気に障ったことは理解できた。
言い回しを間違えた、そう直感してもすでに遅い。
「い、いえ! そういう意味ではなくてですね……」
とっさに発言を改めようと言葉を探す。
けれどその間に、彼は腰掛けていたスツールから立ち上がっていた。
わざとゆっくりと距離を詰めてきて、次の瞬間、私の頭上で大きな影がゆらりと揺れた。
百五十八センチの私と彼との身長差は十五センチほど。けれど、彼自身が放つ独特のオーラのせいか、数字以上の威圧感を覚える。
私は完全に気圧され、言い直すことも忘れてジリジリと後ずさった。
ところがすぐに背中が固い壁にぶつかって、退路を失う。
追い詰められて、私の胸がドクンと強く跳ね上がった。
どうして私は、精神的にも物理的にも追い詰められているんだろう……?
大きく色濃く影を落とす彼を追って、顎を仰け反らせて目線を上げる。
そうでもしないと、その表情を確認できないくらいに、私と彼の間隔は狭まっていた。
「あ、あの……」
とっさの呼びかけはバンッという大きな音に掻き消され、私は反射的に固く目を閉じた。
一拍分の間を置いて恐る恐る目蓋を上げ、
「っ……⁉」
思わずヒュッと音を立てて息をのむ。
「さあ、どうです? 今もあなたの目には私が女性的に映っていますか」
静かなパニックでバグる思考回路を、私は必死に軌道修正しようと試みた。
その一瞬前までは、一応普通の会話が成立していたはずだった。
けっして、楽しく和やかな雰囲気ではない。
私が投げた質問に淡々とではあるものの、短く答えてはくれる――どう見ても相手の方は気が乗らない様子ではあっても、私の目的は十分叶えられていたんだからそれでいい。
ところが今、私と彼がいる部屋の空気が、一瞬にして凍りついた。
「へえ……。つまり私はか弱い女性的な男……そういうことですか」
チクリを通り越してグサグサと刺さるような嫌み。
そうでなくても、最後に投げた私の質問が、彼の気に障ったことは理解できた。
言い回しを間違えた、そう直感してもすでに遅い。
「い、いえ! そういう意味ではなくてですね……」
とっさに発言を改めようと言葉を探す。
けれどその間に、彼は腰掛けていたスツールから立ち上がっていた。
わざとゆっくりと距離を詰めてきて、次の瞬間、私の頭上で大きな影がゆらりと揺れた。
百五十八センチの私と彼との身長差は十五センチほど。けれど、彼自身が放つ独特のオーラのせいか、数字以上の威圧感を覚える。
私は完全に気圧され、言い直すことも忘れてジリジリと後ずさった。
ところがすぐに背中が固い壁にぶつかって、退路を失う。
追い詰められて、私の胸がドクンと強く跳ね上がった。
どうして私は、精神的にも物理的にも追い詰められているんだろう……?
大きく色濃く影を落とす彼を追って、顎を仰け反らせて目線を上げる。
そうでもしないと、その表情を確認できないくらいに、私と彼の間隔は狭まっていた。
「あ、あの……」
とっさの呼びかけはバンッという大きな音に掻き消され、私は反射的に固く目を閉じた。
一拍分の間を置いて恐る恐る目蓋を上げ、
「っ……⁉」
思わずヒュッと音を立てて息をのむ。
「さあ、どうです? 今もあなたの目には私が女性的に映っていますか」
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