スクレ格安につき、絶賛販売中。
第一話 取るに足らない
──チリンチリン。
「あら、お客様がいらっしゃったようね」
夜月は何か書いている手をとめ、木製のドアを振り返る。
「こんにちは」
20代くらいだろうか。
子供じみた男性が、軽やかな足取りで夜月の近づいてきた。
「こんにちは。今日は月が綺麗ですわね」
「そうですね」
このお店は、満月が出ている夜にしか開店しない。
夜月は、店を1人で営んでいる。
このお店は情報を売ったり買い取ったりするお店で、日々大繁盛。
名前は、「スクレ堂」といって、スクレとは秘密を意味する。
「あなたはどのような情報をお買い求めになられますか」
夜月が男性に問う。
「あっ……、あの、情報を買い取ってもらいたくて」
「あらまあそうでしたか。ではお聞かせください」
「はい」
男性は大きく息を吸う。
「この店の隣のデパートが、閉店するそうですよ」
デパートの閉店という情報を売りに来たらしい。
「そうですか……」
夜月は長い睫毛を伏せる。月の光で銀色に輝く睫毛。
「情報は、私が品定めいたします」
考え込むようにうんうん唸っている夜月。
「あなたは、私にこの情報を買い取れとおっしゃいましたね」
「この情報……私が買い取る価値もありません。遠くのデパートだったらすんなりお買い取りいたしますが、わざわざ店の隣のデパートの閉店を知らせに来て私が買い取ると思われましたでしょうか。私もずいぶんと軽く見られたものですね。今まで見てきた中で一番つまらなくてくだらない方ですわ」
声が酷く冷徹で冷淡だ。どんどん言葉を連ねていく様は、冬の雪景色のよう。
男性は必死に喉から声を出そうとするが、夜月の全身から出される圧に耐え切れなかったようで、かじかんだ指に急いで手袋を篏め、店を飛び出して行った。
夜月は書き物に戻り、何もなかったかのようにペンを走らせる。
「あら、お客様がいらっしゃったようね」
夜月は何か書いている手をとめ、木製のドアを振り返る。
「こんにちは」
20代くらいだろうか。
子供じみた男性が、軽やかな足取りで夜月の近づいてきた。
「こんにちは。今日は月が綺麗ですわね」
「そうですね」
このお店は、満月が出ている夜にしか開店しない。
夜月は、店を1人で営んでいる。
このお店は情報を売ったり買い取ったりするお店で、日々大繁盛。
名前は、「スクレ堂」といって、スクレとは秘密を意味する。
「あなたはどのような情報をお買い求めになられますか」
夜月が男性に問う。
「あっ……、あの、情報を買い取ってもらいたくて」
「あらまあそうでしたか。ではお聞かせください」
「はい」
男性は大きく息を吸う。
「この店の隣のデパートが、閉店するそうですよ」
デパートの閉店という情報を売りに来たらしい。
「そうですか……」
夜月は長い睫毛を伏せる。月の光で銀色に輝く睫毛。
「情報は、私が品定めいたします」
考え込むようにうんうん唸っている夜月。
「あなたは、私にこの情報を買い取れとおっしゃいましたね」
「この情報……私が買い取る価値もありません。遠くのデパートだったらすんなりお買い取りいたしますが、わざわざ店の隣のデパートの閉店を知らせに来て私が買い取ると思われましたでしょうか。私もずいぶんと軽く見られたものですね。今まで見てきた中で一番つまらなくてくだらない方ですわ」
声が酷く冷徹で冷淡だ。どんどん言葉を連ねていく様は、冬の雪景色のよう。
男性は必死に喉から声を出そうとするが、夜月の全身から出される圧に耐え切れなかったようで、かじかんだ指に急いで手袋を篏め、店を飛び出して行った。
夜月は書き物に戻り、何もなかったかのようにペンを走らせる。