あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。

第1話「また、会えたね」

高校二年生の春。

私、桜井美月は、図書室で一人の男の子と出会った。

「それ、面白い?」

突然、後ろから声をかけられた。

振り返ると、同じクラスの高瀬湊が立っていた。

「……読んでる途中だから分かんない」

「じゃあ、面白かったら貸して」

「なんで?」

「美月が面白いって思った本なら、俺も読んでみたいから」

「……私、名前教えたっけ?」

「教えてない」

「じゃあ、なんで知ってるの?」

湊は少し得意げに笑った。

「先生が呼んでた」

「……なにそれ」

「ちゃんと聞いてたんだよ」

それが、私たちの最初だった。

それから湊は、毎日のように図書室に来るようになった。

本を読むわけでもない。

ただ、私の向かいの席に座っている。

「湊って、本読まないよね」

「読むよ」

「じゃあ、なんで1ページも進んでないの?」

「美月がいるから」

「……意味わかんない」

「俺も分かんない」

そう言って笑う湊が、私はいつの間にか好きになっていた。
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