あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
帰り道。

駅に向かって歩いていると、颯が突然立ち止まった。

「美月」

「ん?」

「俺さ、ずっと言おうと思ってたことがあるんだけど」

いつもと違う声だった。

私は足を止めた。

「……何?」

颯は一度、視線を落とした。

それから、ゆっくりと顔を上げる。

「俺、美月のこと――」

そのとき。

私のスマホが鳴った。

画面に表示された名前を見て、心臓が跳ねた。

高瀬湊。

「……ごめん、颯」

私は慌てて電話に出た。

「もしもし?」

『……美月?』

湊の声だった。

でも、いつもと少し違う。

「どうしたの?」

『あのさ……』

短い沈黙。

『今日、会える?』

「え? うん、会えるよ。どうしたの?」

『……ちょっと、声が聞きたくなって』

胸がぎゅっと締めつけられた。

「湊……」

『ごめん。急に』

「ううん! 全然大丈夫だよ」

私はすぐに答えた。

「今から会おう?」

『……いいの?』

「もちろん!」

電話の向こうで、湊が小さく息を吐いた。

『ありがとう』

その声を聞くだけで、会いたくなる。

今すぐ、顔が見たい。

手をつなぎたい。

好きだと伝えたい。
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