あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
帰り道。

駅の改札前で、湊が私を呼び止めた。

「美月」

「なに?」

「また、会ってくれる?」

私は思わず笑った。

「もちろんだよ」

「来週も?」

「うん」

「再来週も?」

「もう、何回聞くの?」

笑いながら答えると、湊も笑った。

けれど、次の瞬間。

彼は少しだけ真剣な顔になった。

「……何回でも、聞きたいんだ」

私は笑うのをやめた。

「いつまで美月と会えるのか、俺にはわからないから」

湊は、私の手をそっと握った。

「だから、会えるときに、たくさん会いたい」

涙がこぼれそうになる。

私は彼の手を握り返した。

「うん」

そして、精いっぱい笑った。

「何回でも、会おうね」

湊は安心したように微笑んだ。

「ありがとう、美月」

その笑顔を見ながら、私は心の中で願った。

どうか、この時間が少しでも長く続きますように。

どうか、明日も明後日も、その先も。

この人の隣で笑えますように。

まだ知らなかった。

この何気ない帰り道が、いつか、どうしようもなく恋しくなる日が来ることを。

そして、湊が私に向けて笑ってくれたこの表情を、私は何年経っても忘れられなくなることを。
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