愛する人の代わりにはなれますか【10/10完結】
「違いますよね。……他に、もっと直感的に思ったことがあるはずです」
低く落とされた声に、先生がわずかに息を呑む。
まるで答えを知っているのは自分だと言わんばかりの、椎名くんの視線。
その言葉に乗せられるように、先生はしばらく黙り込んだ。
───そして、躊躇うように唇を開いた。
「───『似てる』」
先生と同時にその言葉を口にした椎名くんが、満足げにふっと笑みを浮かべた。
「ですよね」
まるで、ようやく答え合わせができたとでも言うような、余裕たっぷりの表情。
そんな椎名くんとは対照的に、先生は驚愕に目を見開いていた。
どうして自分の言いたいことがわかったのか。
そんな疑問が、その瞳にありありと浮かんでいる。
……正直、私だってよくわからない。
今、この場で何が起きているのか。
椎名くんは、結局何が言いたいのか。
次から次へと浮かんでくる疑問が、頭の中をぐるぐると駆け巡る。
……もしかしたら、この場で一番状況を理解できていないのは、私なんじゃないだろうか。
そう思ったけれど。
それでも、口を挟むことはできなかった。
二人の会話に割って入るなんて、私には到底できない。
ただ黙って、目の前で交わされる言葉を聞いていることしかできなかった。
「俺がこの学校に来て、はじめてセンセーと会ったとき」
椎名くんが、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
その表情に浮かんでいるのは、普段はほとんど見せることのない、どこか意地悪な笑み。
それは、なぜだか少しだけ危険な香りがした。