愛する人の代わりにはなれますか【10/10完結】
君が愛した人
放課後の保健室に三人きり。
窓の外は茜色に染まり始め、静かな部屋に差し込む光が埃をキラキラと照らしていた。
静かな部屋に、椎名くんの声だけがやけに鮮明に響く。
何を思って、彼は今さらそんなことを言い出したんだろうか。
───そんな疑問が、ふと胸に引っ掛かった。
「俺が転校先をこの学校に決めた理由、知りたいですか?」
そう言って、椎名くんは目を細めた。
……まるで、これから私たちが驚くであろう未来を、彼だけが知っているかのように。
「……センセーがここで養護教諭やってるって聞いて、この学校にしようって決めたんです」
「え……?」
思わず、先生と顔を見合わせる。
……どうして、そこで先生が出てくるんだろう。
───頭の中が追いつかない。
そんな私たちの反応を見て、椎名くんはふっと口元を緩めた。
その笑みは、
いつもの爽やかなものとは少し違う。
どこか妖艶で、
何かを企んでいるようにも見えた。
「センセー。はじめて俺のことを見たとき、なんて思いました?」
「えっ?え、えぇと、すごく美形だなって……」
先生は戸惑いながらも、素直に答える。
そう。
椎名くんは、"イケメン"よりも"美男子"という言葉の方が似合う。
……だから、先生の椎名くんに対する感想はもっともなはずなのに。
椎名くんは先生の言葉が気に入らなかったのか、ちょっとだけ眉を寄せて先生をジッと見つめた。