愛する人の代わりにはなれますか【10/10完結】



「仲間も失って」



───そして。



「大切だった居場所まで奪われた、俺の何がわかるって言うんですか」

「………!!」



先生が、息を呑んだ。

同時に、私も自分の心臓がドクンと嫌な跳ね方をするのを感じて、言葉を失った。




───知らなかった。



椎名くんが、そんなにもたくさんのものを失っていたなんて。


いつも飄々としていて。

何を考えているのかわからなくて。



どこか他人事みたいに笑っている彼の中に、こんなにも大きな喪失があったなんて。





「………だから」


椎名くんが、静かに続ける。



「俺は、別にセンセーの気持ちをわかったつもりでいるわけじゃないです」

「…………」


「ただ、俺は……」


ほんの一瞬だけ。

彼の綺麗な声が、かすかに掠れた。



「自分が大切な人を失ったからこそ、もうこれ以上、他の誰かが苦しんでるのを見たくないだけです。……この痛みを味わうのは、俺だけでいい」



その言葉に、先生の瞳が大きく揺れる。


「正直、ナツさんだからこうしてるわけでもないです。」


「……え?」

「由宇が大切にしてた人だから」



───淡々と。

どこまでも淡々と、椎名くんは冷酷な言葉を紡ぐ。


「だから、放っておけないんです」



その言葉は、傍から見たら歪な優しさに聞こえるのかもしれない。


……でも、その中には触れたら指が切れるほどの、冷たい棘が含まれていた。


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