恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 窓の外を流れるオフィス街のビル群の明かりを見つめる。
和香は神楽坂とできる限り距離を取り、ドア際に身を寄せたまま、窓の外をじっと見つめていた。
 やがて車が停車したのは、都心の一角に佇む高級ホテルの最上階に位置するフレンチレストランだった。 案内されたのは、夜景が一望できるガラス張りのプライベートルームで、テーブルの上には繊細な生け花と銀の食器が並び、キャンドルの揺らめく炎が穏やかな陰影を作っている。

 ウェイターが手際よくシャンパンを注ぎ、料理が順に運ばれてくる間も、和香は一切手をつけることなく静かに神楽坂を見据えていた。

「海の件…とは、いったい何のことですか。神楽坂さんしか知らないこと、あるんですか」

 単刀直入に尋ねる和香に対し、神楽坂はグラスを傾け、琥珀色の液体を一口含んでから静かに微笑んだ。

「いいえ。何もありません。すべて嘘です」
「……え?」

 あまりにもあっさりとした告白に、和香は耳を疑った。

「まぁ、あなたのご両親に海さんの居場所を教えてあげてもいいのですが…それはまだしていません。今回はあなたを連れ出すための、小さな狂言ですよ」
「嘘をついて私を脅したんですか。最低です」

 憤りに肩を震わせる和香に対し、神楽坂は眉一つ動かさず、どこか遠くを見るような瞳でグラスの縁を指先でなぞった。
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