恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 そんな思いが頭をよぎる中、和香はふっと息を吐くように、ずっと胸の奥に隠し続けていた本音をこぼした。

「実はね。私、会社を辞めようと思ってたんだ」
「…え?」

 至近距離にあった帆高の瞳が驚きに揺れる。
和香は静かに、自分に言い聞かせるように頷いた。

「海を逃がしたって、いつかは見つかってしまうかもしれないでしょう?だから…少しでも時間を稼ぎたくて帆高君の提案に乗ったけれど、本当は、最後は自分が折れて会社を辞めるつもりでいたの。ただ、神楽坂さんとの結婚だけは、どうしても嫌だった。生涯を共にするパートナーくらい、自分の意思で選びたかったから…それだけは何とかして拒み通そうって、必死だったんだよ」

 和香の言葉を、帆高はただ黙って、一字一句を噛みしめるように聞いていた。そして、握っていた彼女の手へ、さらにキュッと力を込める。

「辞めなくていいですよ。何も諦める必要なんてありません。大丈夫です、俺がついていますから」

 まっすぐで、揺るぎない眼差し、絡められた指先から伝わってくる確かな熱…そのすべてが、不安に震えていた和香の心を優しく解き放していく。

「うん。そうだよね。帆高君がいれば、大丈夫だよね」

 安堵の溜息をつく和香。
だが、現実の課題が消えたわけではない。両親と神楽坂の三人と近いうちに対峙しなければいけない。
< 146 / 190 >

この作品をシェア

pagetop